2011 Fiscal Year Research-status Report
第2言語音声習得における知覚と生成の問題:成人日本語学習者の外国人訛りを中心に
Project/Area Number |
23720286
|
Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
金 菊熙 松山大学, 人文学部, 准教授 (00599417)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 第2言語習得 / 音声の知覚と生成 / 外国人訛り / 成人学習者 / 発話模倣能力 / 日本語話者 / 中国語話者 / 韓国語話者 |
Research Abstract |
本研究の主な狙いは、先行研究から浮かび上がった研究課題に対し、新たな音声データを持ってポストテストを実施し、先行研究の結果と比較することで、結論の一般化を図ることである。そのためには、何より質の高い音声発話データの収集が不可欠である。ただ単に被験者の発話音声を得るだけが目的ではなく、一定の基準を満たした者からのデータを集めることが最大重要課題であると考えている。そのために、3年間の研究期間を設定し、実験データの質の確保を最優先し、調査結果の分析・考察に十分な時間をかけると共に、結論を急ぐために不適切な一般化を避けることを心がける。本年度の重点は、まず先行研究で用いられた音声データ(単音と文章)とは別の発話材料(たとえば、単語やフレーズ)で、新たな被験者による音声データを収集し、パイロットテストが行えるための準備を進めることである。正式な実験を行うためには、少なくとも50人以上からの音声データが必要になる。生の音声データの収集→編集→聞き取り実験の計画→実験協力者(聞き手)の募集→音声聴解実験→実験結果とその分析→結論の導出、という手順を踏むことになる。この一連の作業を慎重に進めていくためにも、パイロットテストは大変重要な意義を持つ。パイロットテストは、中国語を母語とする成人の日本語学習者を被験者とし、比較集団話者として主に韓国語や日本語母語話者からも音声データを収集する。当該年度の成果として、パイロットテストのための発話データを取りまとめ、主に台湾において日本語を外国語として学習する中国語母語話者の被験者から音声データを収集することが出来たことである。また、音声データの収集に先立って、資料調査を通じて、中国語母語話者の日本語発話における音声特徴等に関連する書籍や論文等の参考文献がある程度揃えられ、発話データの選定の上、大いに役に立ったと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度である本年度から所属機関が変わり、4月から研究計画を実行するにはやや困難があった。しかし、国内でのデータ収集よりも先に海外でのデータ収集の機会に恵まれ、夏の1週間は中国の北京で文献調査を行い、冬には、5日間の日程で台湾の台北所在の元智大学を訪れ、20名の被験者から発話データを収集することが出来た。しかし、この一方、国内でのデータ収集は、やや遅れ気味である。その理由として、国外在住被験者に比べ、例えば、日本国内在住の中国語母語話者の場合、長期にわたる滞在経験が必要であるうえ、日常生活の中で一定の日本語の使用頻度が求められるなど、さまざまな制限がある。これらの条件に適した被験者が見つかった場合でも、居住地が一定地域に限らないため、まとまった人数の確保には、当初の予想よりも、時間と場所の制約を強く感じるところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2012年の夏には、先行研究をもとに、文献資料や今の研究計画の内容をまとめ、関連研究会にて発表を予定している。4月より国内在住の被験者からの音声データ収集を行っており、ある程度の音声データが集まる次第、パイロットテストの実施(10月予定)に向け、準備を進めたいと思っている。パイロットテストの結果は、中間報告として、報告書や研究論文の形として投稿を考えている。さらに、年度末を目途に、2度目の海外(韓国)での音声データ収集が行えるよう、計画準備を進めていく予定である。韓国での音声データ収集に関しては、すでに2012年4月に、一度打ち合わせを兼ねた現地調査を行っている。実施時期や場所等の調整がうまく行けば、2012年度中に、韓国での音声データ収集が行えることと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使用用途は、音声データ収集のための出張旅費(国内・海外)と、実験協力者(延べ100人程度)への謝金となる予定である。このほか、最新の文献資料等の収集や、通信関連の雑費として一部充てる予定である。
|
Research Products
(2 results)