2011 Fiscal Year Research-status Report
ボトムアップ式の言語習得概念の英語教育への応用可能性に関する実証的研究
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23720308
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
藤井 数馬 香川高等専門学校, 一般教育科, 講師 (50413779)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ボトムアップ / コア / 英語教育 |
Research Abstract |
平成23年度においては、本研究における準備調査として、コア図式を示すことが意味の理解や記憶の保持に有効に働くのかを実践的に調査した。平成23年度は助動詞を学習対象項目とし、助動詞の意味を説明する際に、コア図式を示さずにいわゆる訳語を用法分類的に提示したグループと、訳語を確認した後に、複数ある訳語に共通するコア図式を紙媒体で提示したグループの間で、意味の理解と記憶の保持において、助動詞のみを空所で開けた穴埋めテストの結果を用いて測定した。その結果、意味の理解においても記憶の保持においても、両者の間で統計上の有意差は見られなかった。ただ、質問紙調査においては、コア図式の提示を意味の理解補助や記憶の保持として有効だと受け止めている学生が多いこともわかった。その後、違う学習者を対象に、再度同じ助動詞のコアを用い、コア図式を示さずにいわゆる訳語を用法分類的に提示したグループと、訳語を確認した後に、複数ある訳語に共通するコア図式を紙媒体で提示し、なおかつそのイメージ化を図るために各コアごとに2~3文の例文も提示したグループの間で、意味の理解と記憶の保持において、助動詞のみを空所で開けた穴埋めテストの結果を用いて測定した。その結果、コア提示直後においては、コア図式を提示したグループの方が有意にいい結果となった。なお、質問紙調査の結果により、今回もコア図式の提示は学習者に概ね好意的に受け入れられていることがわかった。これらの結果から、コア図式を提示し、それを学習者にとって有効な材料とするためには、図式を提示さえすればいいというわけではなく、例文の提示やイメージ化などを施し、コア図式がイメージするところを各自がそれぞれ納得し理解するための工夫が教授者には必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行するにあたり、授業内で提示するコア図式が、意味の理解や記憶の保持において有効な働きをするのかを調べることが、今後の研究のための必要条件となる。すなわち、コアはイメージであり、図式を提示する際には、それがボトムアップ的にしろ、トップダウン的にしろイメージ化がはかれるかどうかが学習者にとって重要であることが、平成23年度に示唆され、それが今後の研究の基盤となるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究結果を基礎調査とし、平成24年度では、コア図式を与える際に、例文からコアをイメージさせるボトムアップ的な教授とコア図式を提示した後に例文を与えるトップダウン的な教授の間で、意味の理解や習得に差が出るかどうかを調査したい。そして、コア図式が英語教育の現場において、具体的にどのように有効的に活用できるかに関する概ねの方向性を突き止めたい。また、認知言語学が主張するところのボトムアップ的な教授とは、本来は豊富なインプットが絶対条件となる。これを日本の言語環境で調査するためには、例えば、今後、英語の多読・多聴等による豊富なインプットを行った経験があるグループと、そうでないグループの間でのコア図式の果たす役割の違いなども視野に入れて研究していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
情報収集や研究成果発表や他の先生方との情報交換のための学会や研究集会への旅費を中心に、成果発表のためのパソコンおよびプリンター等の消耗品の購入を計画している。
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Research Products
(9 results)