2011 Fiscal Year Research-status Report
「コミュニスト」の創造:コミンテルン期における共産主義者形成過程の国際史学的考察
Project/Area Number |
23720309
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
瀧口 順也 北海道大学, スラブ研究センター, 非常勤研究員 (10596802)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 共産主義 / 20世紀史 / グローバル・ヒストリー |
Research Abstract |
平成23年度は、「研究実施計画」に沿って日本国内で閲覧可能な文献を精力的に渉猟した。北海道大学図書館およびスラブ研究センター図書室に所蔵されている1920-1930年代のソ連の政府・党機関紙(『プラウダ』『イズヴェスチア』など)を隈なく閲覧し、ソ連の国際共産主義の普及を目指す動向とその変化を観察した。また、東京大学総合図書館では大衆向けに出版されたソ連の定期刊行物(『アガニョーク』)を閲覧し、党・政府の国内的プロパガンダの動向を追った。これらの調査から得られた洞察は、以前から続けている研究の成果と合わせて、2本の査読付雑誌論文として成果を示した〔13.研究発表参照〕。一橋大学経済研究所資料室では、マイクロフィルム化されたイギリス共産党創設期の機関紙(『Call』『Communist』)を閲覧し、黎明期のイギリス共産党におけるソ連からの指針の受容と国内党員に向けたプロパガンダの方向性を調査した。 イギリス共産党については、英国マンチェスターにおいてアーカイブ資料の予備調査も敢行した。とりわけ、出版された文献からは観察できない党執行部会議の議事録や個人ファイルを閲覧し、イギリス共産党深奥部での議論を調査した。イギリス共産党アーカイブでの調査からは、黎明期共産党員の手による自叙伝や回想録も発見し、新たな研究の展開の可能性も獲得した。具体的には、学術的研究の対象となってはいないが、各国コミュニストにとってモスクワでのコミュニティー形成の中心となっていた「ルックス・ホテル」を切り口とした研究は意義あるものになると予期される。「ルックス・ホテル」に関する知見は、予備的考察としてスラブ研究センター内での研究会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた文献渉猟はほぼ達成でき、ソ連共産党の言説考察とイギリス共産党の考察はおおむね順調に進捗している。日本共産党に関する調査は当初の実施計画どおり来年度以降に進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に沿って、24年度からは本格的なアーカイブでの資料収集を開始する。とりわけ、23年度にアーカイブにて予備調査を行ったイギリス共産党に関する資料はさらに広範囲に博捜する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度に調査・研究推進用のパソコンを購入する予定だったが、私費での購入を選択したため計上した予算から未使用額が発生した。繰り越し分については、24年度の物品費および渡航費として利用する。24年度は数回に渡るアーカイブおよび研究所での資料収集を予定しており、大方は渡航費用に使用される見込みである。直接にアクセスが難しい資料については、出版されているドキュメント・コレクションの購入やマイクロフィルムの貸借などにより補完する。
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Research Products
(3 results)