2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720313
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 陽一 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (40568466)
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Keywords | 近世 / 日本 / 旅 / 名所 / 観光 / 温泉 / 紀行文 / 道中日記 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近世・近代における地域社会と民衆動向の展開を観光の視点から捉え、観光地の形成過程を解明することである。具体的には、旅行者の記録収集と共に、近世より名所として著名であった松島(宮城県)を対象に史料の現地調査を行い、それを分析していく計画であった。だが、研究計画申請後に東日本大震災が発生したことから、現地調査は断念し、旅行者の記した紀行文と道中日記の収集に重点を置き、彼らの意識の中に観光的な側面が見い出せるかどうか、検討を試みることにした。また、旅先として温泉を取り上げ、史料調査と分析により、温泉と周辺地域の関係、及びその展開について検証することとした。 最終年度においては、鶴岡市郷土資料館・函館市立図書館等で調査を実施し、東北地方旅行者の紀行文と道中日記約150点を収集した。また、一関市博物館では須川温泉(岩手県一関市)に関する史料を収集した。 紀行文・道中日記に関しては、収集した中から松島を来訪した旅行者のものに限定して分析を進め、松島までのマクロな行程と松島でのミクロな行動をリスト化する基礎的作業に取り組んだ。この内容は、講演会で市民向けに公表している。その後、松島の中の雄島での行動に焦点を絞って分析を深めたところ、紀行文執筆者の学者層と道中日記執筆者の庶民層では、行動と意識に相違がみられることが明らかになった。観光的意識をより強く滲ませているのは庶民層である。この成果について、学者層の行動をまとめた論文を現在投稿中であり、庶民層の行動に関する論考を今後まとめる予定である。これにより、旅行者が観光的な意識を強めていった過程が解明され、松島の観光地形成過程を探る糸口を得ることができる。 また、須川温泉については、近代に観光地化が進む以前の様態をまず明らかにしようと考え、温泉周辺の近世の状況を明らかにした論考を執筆しており、平成26年中に発表する予定である。
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