2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720321
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
板垣 貴志 神戸大学, その他の研究科, 助教 (80588385)
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Keywords | 家畜預託慣行 / 家畜小作 / 預け牛 / 鞍下牛 / 農業保険 / 家畜保険 / 農業災害補償制度 / 中国山地 |
Research Abstract |
最終年度には、今までの研究をとりまとめて、家畜預託慣行の近代日本農村における歴史的意義につき考察を進めた。特に、1930年代に家畜預託慣行は衰退するが、それに代替したものを明らかにする作業にとりかかった。戦後の農業災害補償制度の源流ともなっている1930年代に法整備が進展した農業関連の保険・金融政策に着目し、史料を収集し分析した。 その結果、農村社会における家畜の預託は、預ける側(牛持)と預かる側(厩先)の両者にとって相互扶助的な慣行的側面と、副業的利益追求を目的とする経営的側面が融合したものとして捉えるべきもので、家畜市場をめぐる法整備および金融市場、保険市場ともに未発達であった当時の農村社会において、それを補完し農民の営農や生活、つまりは《生存》を保障するインフォーマルな社会制度であったとの結論に至った。 また、国家的なフォーマルな保険や金融が整備され、家畜購入資本の融資が可能となり、だれもが自家牛を所有できような時代が確実に到来したことで、動産信用にもとづく家畜保険は地域社会に歓迎された。しかし、従来の家畜預託慣行の大前提ともなっていた地域内分業を崩壊させた要因を作ったものも、他ならぬ国家的な軍事行動であったことは完全に忘れられていることは指摘しておく必要がある。 これらの総括的内容は、2012年度大阪歴史学会大会近代史部会にて報告した。大会当日の報告内容およびコメント、討論要旨に関しては、「1930年代における日本農政の転換と家畜預託慣行」(『ヒストリア』第235号、2012年12月)に掲載されている。
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Research Products
(2 results)