2011 Fiscal Year Research-status Report
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23720322
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
福留 真紀 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60549517)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 日本史 / 近世 / 徳川幕府 / 将軍側近 / 柳沢吉保 / 田沼意次 |
Research Abstract |
本年度は、将軍側近から見た徳川幕府の政治構造について、江戸時代前期・中期・後期それぞれの時期について、成果を上げることができた。 前期については、明治大学博物館所蔵の江戸幕府日記の調査、分析を行った。 中期は、平成21~22年度若手研究(研究活動スタート支援)「近世日本における将軍側近の総合的研究」の2年目に手掛けていた、『将軍側近 柳沢吉保 -いかにして悪名は作られたか』(新潮社)の執筆を完了し、2011年5月に刊行した。また、山梨県立博物館で開催された「柳沢吉保と甲府城」展の関連シンポジウムにおいて、招待講演「幕府政治における柳沢吉保」を行い、シンポジウムのパネラーも務めた。加えて、同展示の図録に特別論考「柳沢吉保と綱吉政治」を執筆した。また、憲法・政治学研究会で研究報告「将軍側近 柳沢吉保の真実」を行った。他に、かねさは歴史の会(神奈川県横浜市)主催の歴史講演会において、招待講演「武田家と柳沢家」を行った。これらを通して、江戸時代中期の側近の在り方について、柳沢吉保を中心に総括することができた。 後期については、特に田沼時代を中心に研究を進めた。首都大学東京図書情報センターにおいて、当該期の老中日記について、独立行政法人国立公文書館において、田沼意次関係史料の調査、分析を行った。具体的な成果としては、田沼時代の将軍側近の在り方を「田村藍水・西湖日記」から分析し、近世近代研究会にて「将軍側近と殖産興業」と題して、研究報告を行った。また、かねさは歴史の会では、招待講演「田沼意次と人参」を行い、新しい研究成果を一般にも紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要と、当初の研究目的を照らし合わせ、1年目としては、十分な成果が挙げられたと考えている。 前年度までの、若手研究(研究活動スタート支援)「近世日本における将軍側近の総合的研究」(平成21~22年度)では、江戸時代中期の側近を中心に研究を進めており、それに対して、本研究では、初代将軍徳川家康から3代家光の時期(以下、文中では便宜的に「(江戸時代)前期」とする)および、9代家重以降の時期(以下「(江戸時代)後期」)を対象にという方針であり、特に本年度は江戸時代前期を中心にという予定であった。しかし、本年度にも、江戸時代中期の側近についての研究成果をより深化させて、書籍の刊行、論文執筆、講演を行い、シンポジウムのパネラーを務めるなど、学界だけでなく、一般社会にも公表する機会に恵まれた。このことから、より本研究で前期・後期の将軍側近を分析する意義が確認でき、本研究のスタートの上で、非常に良かったと考えている。 江戸時代前期については、研究概要にあるように、当初の予定通り、明治大学博物館において、充実した史料調査を行うことができた。加えて、後期についても首都大学東京図書情報センター所蔵の水野家文書「老中借写日記」の調査を進め、田沼時代については、本草学者田村藍水の日記を分析し、研究会報告および講演も行うことができた。1年目にふさわしく、江戸時代前期だけでなく、中期を含め後期まで、全体を概観できるような成果を上げることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも、当初の研究の推進方策から大きく変えることはない。 平成24年度以降は、初代将軍徳川家康から3代家光の時期はもちろんだが、調査、分析、研究の中心は、9代将軍家重以降の時期の将軍側近となる。 主に、本研究の中心的な分析対象である将軍側近の史料、東京大学史料編纂所に所蔵されている「水野忠友側日記」「水野忠成側日記」をはじめ、本年度もすでに分析に手を付けている、首都大学東京図書情報センター所蔵の水野家文書の内「老中借写日記」の調査、そして幕府情勢の分析のため、島原図書館肥前嶋原松平文庫(長崎県)、名古屋市蓬左文庫(愛知県)、独立行政法人国立公文書館内閣文庫(東京都)、明治大学博物館(東京都)などで、江戸幕府日記類の調査、分析を行う。加えて、早稲田大学図書館所蔵「水野家記録」の分析や、公益財団法人徳川黎明会徳川林政史研究所(東京都)での調査も予定している。 特に、平成24年度は、学習院大学で開催される幕府藩研究会での研究報告を予定していたが、それに加えて、早稲田大学で開催される岡山藩研究会全体会でも報告予定である。 学会・研究会報告に加えて、1年目と同様、市民向け講演会や、将軍側近をテーマとする書籍の執筆なども、積極的に行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費が生じたのは、当初計画よりも、実施の際に、細部で変更があったためである。まず、彦根城博物館(滋賀県)で、井伊家の史料の2度の調査を予定していたが、調査を検討していた史料のうち、すぐに必要だった部分について、すでに博物館によって撮影され、フィルムが所蔵されていたために、出張ではなく、史料の紙焼きコピーを郵送してもらう形に変更したことが挙げられる。また当初、本年度は、初代将軍徳川家康から3代家光の時期(「前期」と称する)の研究を中心に行うこととしていたが、江戸時代全体を網羅する形になったため、前期の研究のための書籍購入が予定より少なくなったり、史料調査先の少々の変更や、それにともなう史料の調査方法の違いによって、必要となる物品が異なったことが影響した。 なお本研究は、限られた時間の中で、多数の幕府関係、大名家の史料調査を行わなければならないため、当初の方針で、史料調査は、その順序にこだわらず、臨機応変に対応することを掲げており、その意味からは、想定の範囲内の変更である。 平成24年度の分析の中心は、9代将軍家重以降の時期の将軍側近となり、首都大学東京図書情報センター所蔵の水野家文書「老中借写日記」の調査を、複数回予定している。こちらの調査はマイクロ複写に限られ、必要な日記類をすべて複写すると多額の費用が発生する。また、名古屋市蓬左文庫では、業者撮影に限られているため、そのための費用がかかるなどし、それらを、次年度繰り越し分で賄うことになると考えている。それ以外は、東京大学史料編纂所、独立行政法人国立公文書館での史料調査、および各種研究会報告などの東京出張、島原市立図書館松平文庫での史料調査など、当初の予定通り進めることで、予定経費が使用できると考えている。
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Research Products
(5 results)