2011 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の沖縄と台湾における「旧慣」調査の比較研究―田代安定関係資料に基づいて
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23720323
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大浜 郁子 琉球大学, 法文学部, 准教授 (60459964)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 田代安定 / 田代安定関係資料(=「田代文庫」) / 沖縄関係資料 / 「旧慣」調査 / 近代台湾 / 近代沖縄 / 近代日本 / 翻刻 |
Research Abstract |
今年度は、台湾大学図書館所蔵「田代安定関係資料」(=「田代文庫」)中の「沖縄関係資料」の調査を重点的に行った。特に、「手稿類」と「筆記類」について、同館が作成した「田代文庫」の仮目録と原史料の照合を行い、仮目録の分類の適否を確認した。「田代文庫」中の沖縄関係の「手稿類」は、同館による分類では「日本」と一括されており、沖縄に限定した分類はなされていない。そのため、研究代表者は、これまでの4年にわたる史料調査によって、手稿類については、「田代文庫」からの「沖縄関係資料」の抽出作業を完了させている。筆記類については、保存状態が良くない史料が多く、仮目録と原史料を照合し、分類の適否を確認する作業には非常に時間を要している。所蔵館では仮目録と原史料の複写は禁じられているため、仮目録の分類順ではなく、保存状態が良好な史料から優先的に照合と確認作業を行った。 今年度の研究実績として特筆すべきことは、台湾大学図書館と研究代表者が「田代文庫」中の「沖縄関係資料」の目録完全版に関して、協働作業を開始したことである。 当初の計画では、青森県立図書館での資料調査を予定していたが、2011年3月に発生した東日本大震災の影響により、同館での調査は次年度以降に先送りした。 なお、今年度は、田代安定に関する研究報告を国際フォーラム「第四屆台日原住民族研究論壇」(台湾・国立政治大学原住民族研究センター主催、2011年9月)において行い、同報告内容は同国際フォーラムの論文集に掲載された。また、田代安定に関連する拙稿が、『第六屆臺灣總督府學術研討會論文集』(台湾・國史館臺灣文獻館、2011年7月)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は三つある。第一は、1880年代から1920年代にかけて、沖縄と台湾において「旧慣」調査を行った官僚である田代安定の関係資料「田代文庫」(台湾大学図書館所蔵)に収録される「沖縄関係資料」の目録の完全版を作成することである。第二は、「田代文庫」中の「沖縄関係資料」を全文翻刻することである。第三は、最終的に各地に現存する田代の関係資料や「田代文庫」中の「沖縄関係資料」に基づいて、近代日本による沖縄と植民地台湾における統治政策をめぐるいくつかの問題(沖縄と台湾における「旧慣」調査の比較や八重山諸島に関する「植民」論など)を解明することである。 この三つの目的のうち、第一と第二については、今年度の調査・研究によって、順調なスタートができたと考えている。特に、「田代文庫」中の「沖縄関係資料」の目録完全版の作成に関して台湾大学図書館と研究代表者が協働作業を開始したことは、本研究の目的を達成するためにも重要である。 草書体で記された「田代文庫」中の「沖縄関係資料」の目録完全版の作成作業は、全体の3分の1程進んだ段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、台湾大学図書館所蔵「田代文庫」中の「沖縄関係資料」目録の完全版の作成と史料調査、その他の国内外の田代関係資料の収集と目録作成、これらの目録と電子データの関連づけを継続する。また、次年度は研究の中間報告として、台湾で国際シンポジウム(2012年8月開催予定の国史館台湾文献館主催「第七屆台湾総督府档案学術研討会」(審査通過))、国際フォーラムでの研究報告(同年8月開催予定の国立政治大学原住民族研究センター主催「第五屆台日原住民族研究論壇」)を予定している。 台湾現地で研究報告を行うことにより、本研究の方向性や分析方法などに関する批評や助言を聴取して、以降の順調な研究遂行をはかりたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、春季の台湾調査(1回)、夏季の台湾調査(1回)と台湾における国際シンポジウムおよびフォーラムにて研究発表(2012年8月開催予定の国史館台湾文献館主催「第七屆台湾総督府档案学術研討会」(審査通過)、同年8月開催予定の国立政治大学原住民族研究センター主催「第五屆台日原住民族研究論壇」)、秋季に鹿児島調査(1回)、冬季に東京調査(1回)の旅費を計上する。 物品は、特に目録作成と電子データのための作業用コンピューターと目録に適した関連ソフトの費用を計上する。作業コンピューターは、主に海外での移動を伴う作業が中心となることや、データ作成の効率を考慮して、軽量で十分な強度を備えたバッテリー蓄電量の多い機種を購入する予定である。また、データ保存用には安定性の高いフラッシュメモリーを使用する。
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Research Products
(3 results)