2013 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア問題による江戸幕府対外政策の動揺と境界領域社会
Project/Area Number |
23720324
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
松尾 晋一 長崎県立大学, 国際情報学部, 准教授 (40453237)
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Keywords | 幕府 / 対外政策 / ロシア / 情報 / 危機管理 |
Research Abstract |
18世紀末~19世紀初頭の蝦夷地におけるロシア問題が、日本にどのような影響を与え、いかなる状況変化がみられたのか、この点について、①ロシア問題に関して境界権力が行った諜報活動の実態把握、②収集した情報の活用と政策の展開、③幕府対外政策の展開と境界領域社会の変化(特に軍役、身分制)の三つを課題として、政治史の立場から検証する。そしてここで導き出された成果を踏まえて、④当該期の日本における危機管理体制再構築の時代的特質を解明することを研究の目的とした。 研究の目的を達成するため、函館市立中央図書館、東京大学史料編纂所、九州大学、県立対馬歴史民俗資料館、松浦史料博物館、韓国国史編纂委員会、天理大学図書館、神宮文庫で調査させていただき、資料撮影及び調書の作成を行い、分析を行った。 その結果、この時期真贋は別として、日本社会に対外的危機感を煽る情報がかなりの量流通していたが、その分析や活用については、地域、身分などによって異なり、日本全体で考えると斑のある状態であった。これは危機意識と有事の想定規模が各々で異なり、国家的規模での対応策を幕府が構築できなかったところにあるが、幕藩体制という国家システムの限界と読み取ることもできるだろう。ただそうした中にあって、長崎のようにほぼすべての住人の安全確保まで計画された事例もあり、身分や性差などに拘らず、人命の安全確保を優先した現代に近い危機対応を構築した事例があったことには注目する必要はある。
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