2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720335
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
引野 亨輔 福山大学, 人間文化学部, 准教授 (90389065)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 浄土真宗 / 遠忌 / 献上儀礼 |
Research Abstract |
本研究の目的は、江戸時代における献上儀礼のあり方に注目し、宗教者・地域社会と仏教教団が取り結んだ社会的・政治的な関係を解明することである。 そこで、平成23年度は、中国地方の真宗寺院・真宗門徒が、親鸞や蓮如の遠忌に際してどのような懇志上納を行ったか、実態把握につとめた。より具体的には、本山西本願寺と地方末寺との往復書簡を収録する『安芸国諸記』や『備後国諸記』を閲覧し、江戸時代中後期における末寺・門徒の献上活動を長いタイムスパンで分析した。 特に福山藩領の場合、地方特産物である備後畳を、御畳講という門徒中心組織の力で、盛んに献上していることが判明した。もっとも、御畳講は必ずしも一枚岩の結束力を誇る組織ではなく、対立・分裂の様相も史料から窺える。どのような経緯で、地方の献上講が動揺をきたし、その一方で、根強く結束力を保つのか。同時代の歴史状況と照らし合わせながら、より緻密な検討を進めることが、今後の課題である。 また、広島藩領の場合、遠忌等に際して行われる懇志上納において、僧侶が強いイニシアティブをとっている。福山藩領の事例と比較することで、両者の活動に違いが生じる理由にもせまってみたい。 なお、懇志上納は、地方末寺・門徒と本山の関係を解き明かす素材であるが、多額の献上が地域社会におけるステイタスの保証へと直結していく可能性も高い。本研究では、備後御畳講のとりまとめ役でもあった信岡家の古文書を収集・分析し、献上行為を行う側の意識にせまることも、主要な目的の一つとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初本研究では、福山市しんいち歴史民俗博物館に寄託されている『信岡家文書』の調査を実施する予定であった。しかし、この古文書が平成23年度はじめに本来の所蔵者である信岡家に返却されたため、調査依頼に手間取り、やや資料収集に遅れが生じることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に実施できなかった信岡家への古文書調査を開始するとともに、引き続き龍谷大学所蔵『備後国諸記』・『安芸国諸記』の解読・分析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
広島大学の大学院生に依頼して『信岡家文書』の解読を進めるとともに、収集した史料の迅速なデータ化を図るために福山大学の学生にも研究協力を依頼する。そのために計上しておいた謝金を使用する。また、資料調査・研究報告の環境を整えるため、撮影器具やモバイルプロジェクターなどを購入する。
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