2012 Fiscal Year Research-status Report
19-20世紀転換期における日本のアカデミズムと被差別部落認識
Project/Area Number |
23720336
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
関口 寛 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (20323909)
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Keywords | 柳田国男 / 留岡幸助 / 被差別部落 / 部落問題 / 部落史 |
Research Abstract |
今年度は、20世紀初頭に部落問題に関心を寄せた民俗学者・柳田国男の漂泊民論、また同時期に社会改良運動のなかで部落問題に関わった留岡幸助の部落改善論の検討を行った。 その結果、柳田国男については、彼の被差別民研究は1920年代前半期までに集中していること、彼がこの主題が日本文化の成立と深く関わる問題と考えていたこと、また被差別民が担った文化や信仰のルーツは大和民族以外に求められると考えていたこと、などが判明した。また彼の研究が喜田貞吉らその後に本格化する日本の部落史研究にも一定の影響力を与えたことも分かった。 続けて、同時期に政府主導のもとに開始された部落改善政策を理論的に指導した知識人として、留岡幸助の部落問題論についても資料を収集し、解析を進めた。その結果、留岡の部落問題への関心は、彼が携わった他の社会改良運動(監獄改良運動や感化教育、地方改良運動など)と一環のものとして捉える必要があること、とくに初期に取り組んだ監獄改良運動時代に彼のなかで形成された犯罪及び犯罪者観に強い影響を受けていることが判明した。留岡自身はアカデミズムに属した訳ではないものの、アメリカへの留学経験があり、監獄学や犯罪学を西洋から学び帰った。これら諸科学は当時日本に紹介されつつあった遺伝学や精神医学と共鳴し合いながら、当該期の被差別部落民理解にも影響を及ぼすことになったと考えられる。 以上の検討により、柳田、留岡ら知識人らの言説が、20世紀初頭の日本社会における部落民像に与えたインパクトについて、一定の見通しを得るに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該期に部落問題を論じた知識人の言説およびその知的文脈について一定の理解を獲得するに至ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
未見史料を収集、解析を進めると共に、これまでの研究成果を活字化する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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