2013 Fiscal Year Annual Research Report
19-20世紀転換期における日本のアカデミズムと被差別部落認識
Project/Area Number |
23720336
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
関口 寛 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (20323909)
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Keywords | 留岡幸助 / 部落改善政策 / 全国水平社 / 水平運動 / 部落解放運動 |
Research Abstract |
研究最終年度に当たる2013年度は、次の研究成果を得た。 20世紀初頭に開始された部落改善政策を指導した留岡幸助をはじめとする知識人の部落問題認識には、当該期に西洋から移入された生物学、遺伝学、犯罪学などの諸科学の強い影響をみてとることができる。前年度に検討したこのテーマを引き継ぎ、今年度は部落改善政策が展開されるなかで、被差別部落民と帝国日本の支配秩序の間に対抗的ヘゲモニー関係が形成されたことを、部落改善運動団体である大和同志会の機関誌『明治之光』にもとづいて分析した。また、1922(大正11)年に全国水平社が創立されるにあたり、その対抗的ヘゲモニー関係を基盤に、部落解放の主張を正当化する論理が形成されたことを明らかにした。 これらの成果は、「部落改善運動と部落民アイデンティティ」畑中敏之、朝治武、内田龍史編『差別とアイデンティティ』阿吽社、2013年、「大正期の部落問題と解放運動」『歴史評論』第766号、2014年2月、および「留岡幸助と部落改善論」京都部落問題関係資料センター主催・部落史連続講座、2013年11月などにおいて発表した。 3年間の研究をつうじて、20世紀初頭に成立した近代部落問題と、西洋諸科学や人種改良政策との相関を見渡せるようになった。今後は、この観点を地方改良運動や感化救済事業にも敷衍し、同時期の帝国日本社会の全体が人種改良的観点にもとづいて再編成されていったことを明らかにしたい。
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Research Products
(3 results)