2012 Fiscal Year Research-status Report
漢人商業地区「買売城」から見る清代モンゴルの経済構造
Project/Area Number |
23720341
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 憲行 東北大学, 東北アジア研究センター, 専門研究員 (50534179)
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Keywords | 国際情報交流 / モンゴル / 中国 |
Research Abstract |
平成24年度は前年度同様、モンゴル国立中央公文書館にて史料調査を実施し、前年の調査で抽出した課題、特にハルハ・モンゴル北部耕作地問題関連の史料調査・収集を実施した。 今年度は同公文書館フレー弁事大臣衙門フォンド所蔵文書から主に、①嘉慶6(1801)年の蒙漢婚姻再禁止令、②同治年間(1862~1874年)にジェブツンダンバ・ホトクトの隷属民シャビナルとトシェート・ハン部ザサグ旗民の間で起こった耕作地を巡る争い、に関わるものを調査・収集した。 その結果、以下のことが明らかになった。①蒙漢婚姻再禁止の要因が、乾隆52(1787)年の婚姻許可令に伴い牧地での蒙漢混住が従来以上に進行し、現地当局がそれを治安悪化の要因とみなしていたことである。以前より知られている禁令ではあるが、その制定の背景が明らかになった点は、清代モンゴル研究史において大きな意義がある。②遊牧を主たる生業としていた清代モンゴルのハルハ社会で漢人ではなく、モンゴル人同士(シャビナルとザサグ旗民)同士による耕作地争い自体、従来の研究史では触れられることが少なかった分野であり、当該期のモンゴル社会経済を考える上で新たな視点を提供する事件と思われる。また事件関係者のシャビナルの中には漢人商人を親に持つ者もおり、親子のつながりを利用して開墾事業を行っていた点は、「蒙漢の分離」を目指すとされる清朝の「封禁政策」のを再検討するうえで重要なものとなりうる。 そのほか、モンゴル国立大学歴史学部A.オユンジャルガル准教授、J.ウランゴア教授など現地の研究者らと、清代モンゴル史研究に関する最新の研究動向について意見の交換をはかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、平成24年度はモンゴル国立中央アーカイブでの史料調査を夏春の2度実施する予定であったが、一身上の都合により、平成24年12月の1度しか実施できなかったため。 それにより、研究計画の一部(漢人商人と寺院経済の関連、漢人商人の家畜管理とモンゴル遊牧社会)については調査が不十分であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
ウランバートル市郊外への移転準備のため、平成25年3月をもってモンゴル国立中央公文書館満洲フォンド史料の閲覧が不可能となった。本研究はモンゴル国の現地史料の利用を研究の柱としており、次年度は大幅な計画見直しを図らねばならない。具体的には、本研究で計画した三つの課題のうち、「漢人商人の家畜管理とモンゴル遊牧社会」、「買売城とモンゴル仏教寺院の経済関係とモンゴル地方社会」は、モンゴル国立中央公文書館所蔵の現地史料の利用を前提としていたため、現状では計画通りに研究を実施することは厳しい状況にある。 そこで、不本意ながら次年度は、今後はもう一つの課題である「ローカル交易拠点としての買売城」を研究の中心に据え、これまで現地史料をこれまで収集した史料から抽出した課題について、清朝中央側の対応から検討することを計画している。そのために中国第一歴史档案館(北京)、国立故宮博物院(台北)などでの調査を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度使用額は、23・24年度に計画していたモンゴル国立中央公文書館での史料調査延期により生じたものである。最終年度に実施する史料調査など必要な経費として、平成25年度請求額とあわせて使用する予定である。
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