2015 Fiscal Year Research-status Report
開港期朝鮮の対日外交政策研究―漁業問題をめぐる条約の締結過程と運用実態を中心に―
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23720344
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 裕美 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (80547563)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2020-03-31
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Keywords | 朝鮮外交 / 漁業 |
Outline of Annual Research Achievements |
開港期朝鮮における漁業関連外交政策を明らかにすることが本研究の目的であるが、本年度は特に、1883年に清との間に定められた朝清商民水陸貿易章程第3条における漁業規定を中心に調査・検討を行った。 これまでの研究から申請者は、開港期朝鮮の外交における最優先課題はやはり、対日関係の調整でも対欧米関係の開始でもなく、対清関係の改編であったのではないかという見通しを持つに至った。朝清商民水陸貿易章程は、従来の研究においては清の一方的な権利行使として理解されてきた。しかし申請者は、この水陸章程は、朝鮮が宗属関係という絶対的な上下関係の中で、朝鮮の利益に沿った対清関係改編を認めさせるという、実現度を慎重に吟味したぎりぎりの外交戦略が込められているものであると考えている。このような文脈から、水陸章程第3条の漁業規定を分析する必要があるためである。 具体的な方法としてまずは、水陸章程成立以前における対清漁業問題についての朝鮮政府の認識と対応を確認した。清の海禁政策下で清漁民の朝鮮沿海進出がいかに行われていたのか、そしてそれを清政府、朝鮮政府それぞれがどのように処理しようとしていたかを明らかにした。それを前提として水陸章程第3条の成立経緯と内容を再検討したところ、朝鮮側の戦略が明確化された。また、章程成立後の清漁民朝鮮沿海侵入事件を取りあげて、章程第3条の運用実態を明らかにしたところ、その戦略は一貫して外交政策として引き継がれていることがわかった。 以上の内容は、2015年6月の東アジア近代史学会大会シンポジウムで報告を行い、2016年6月刊行予定の『東アジア近代史』第20号に、「開港期朝鮮の沿海漁業をめぐる外交政策―朝清商民水陸貿易章程第三条を手がかりに」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、朝清商民水陸貿易章程の後に締結された日本との日朝通商章程(1883年)、日朝通漁章程(1889年)を検討する予定であった。しかし、朝鮮外交の中心課題を明らかにするために、朝清商民水陸貿易章程の再検討を行ったため、日本との二つの章程の検討はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定は変更されたが、朝清商民水陸貿易章程の再検討を行うことにより、同時期に外交交渉が行われた日朝通商章程の検討は進んだと言える。その成果を投稿論文としてまとめる必要がある。 日朝通商章程から六年もの交渉期間を必要とした日朝通漁章程については、済州島沿海における漁業問題が決定的に重要である。次年度は済州島における資料収集も含め、この問題の検討を集中的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
育児上の理由により、海外出張を予定より短期にしか実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は韓国、中国への資料収集を予定している。
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Research Products
(3 results)