2011 Fiscal Year Research-status Report
古チベット語史料による古代チベット帝国の統治体制の研究―税制と土地制を中心に
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23720347
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
岩尾 一史 神戸市外国語大学, 外国語学研究科, 研究員 (90566655)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 古代チベット帝国 / 敦煌 / 税制 / 会計 / チベット語 |
Research Abstract |
出版:「古代チベット帝国支配下の敦煌における穀物倉会計:S.10647 + Pelliot tibetain 1111の紹介」と題した論文を学会誌『内陸アジア言語の研究』に発表し、チベット支配期敦煌の穀物倉会計文書を分析し、そこから判明したチベットの会計方式と税制の一端を紹介することができた。また、武内紹人、Sam van Schaikとともに、Old Tibetan Texts in The Stein Collction Or.8210を出版することができた。本書は大英図書館所蔵スタインコレクションOr.8210中におけるチベット語文書のカタログであり、税制関係文書も数点含まれる。口頭発表:内陸アジア史学会にて「古代チベット支配下敦煌における写経事業とその経費処理」と題した口頭発表を行った。そこでは、敦煌出土チベット語文書を用いて、写経事業における経費がチベットの会計においてどのように処理されたかを明らかにすることができた。さらに、日仏東洋学会にて「古代チベット帝国における農民・牧民の区別と徴税」と題した口頭発表を行った。そこでは、古代チベットにおいて民衆は農民・牧民に区分されていたこと、それぞれに別種の税が課されていたこと、そして農・牧の間に居る人々に対してもそれぞれの生業に応じて柔軟な課税がなされていたことを明らかにすることができた。調査:チベットにおける古代と近代の税制の関係を調べるため、ダラムサラ(インド)のLibrary of Tibetan Works and Archivesに行き、近代税制に関するチベット語写本を調査することができた。また、東京の東洋文庫にて近代税制に関係するチベット語写本数点を調査することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に掲げた、古代チベット帝国の統治制度、特に税制と土地制を明らかにする、という課題について、すでに幾つかの研究発表を行い、論文を出版するという形によって順調に進展しつつある。特に研究目的の一つである古代チベット帝国における農民・牧民の分割統治と土地制度の関係について、また、徴税制度の一端について、チベット帝国支配下の敦煌における大規模写経事業の経費処理を研究することによって明らかにし得たことは、三年間にわたる研究計画の遂行上、当初の目論み通りの進展と言い得る。今後は、これら学会で得ることのできた知見を基に、研究を深化させていくことになる。 さらに、大英図書館所蔵スタインコレクションOr.8210に含まれるチベット語文書のカタログを出版することができた。これは平成25年度までに完成することを見込んでいたが、諸事情により平成23年度内に出版することができた。 一方、出土文書データや二次史料の収集も順調に進んだ。調査の過程で、新たな文献の存在が明らかになることがしばしばであり、特にインドのダラムサラにおいて近代のチベット語税制史料を収集できたのは思わぬ成果であった。今後はこれら収集史料を整理して、順次発表していくことが課題となる。 以上により、おおむね順調に進展している、と自己判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、本年度までに得られた知見を基に情報・データを蓄積し、整理して出版する。出土史料データに関しては、今後も所蔵機関に行き、チベット語文書や漢語文書など関係する出土史料を出来るだけ実見して、データを収集する。次年度は特にフランスの国立図書館所蔵の文書調査を行う予定である。また、台湾に関連する出土史料が一点存在することが分かったので、研究機関と連絡を取り、もし可能であれば現地に行って実見調査を行う。 あわせて、関連する古典チベット語文献を調査する。特に国内の研究機関、東京大学、東洋文庫などに所蔵されている文献が調査対象である。 また、本年度の調査によって、インドのダラムサラには、近代チベットの税制・土地制に関する近代チベット語文書が存在すること、またそれらを正確に解読するには、現地の元チベット政府役人に聞き取り調査を行う必要があることがわかった。今後、機会をみつけて聞き取り調査を実行し、近代の税制・土地制の一端を明らかにするとともに、それぞ通じて古代の制度について考察したい。 さらに、得られたデータを整理し、研究発表を積極的に行う。次年度にはすでに一つの国際学会発表が内定している。内外の研究者の意見を取り入れつつ、研究を深化さ、論文という形で順次発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・フランスの国立図書館に出張し、チベット語出土文書、漢語出土文書の実見調査を行う。また、研究の進展如何によっては、台湾に出張し、チベット語出土文書、漢語出土文書の実見調査を行う。さらに、研究の進展如何によって、ダラムサラにて文献調査・聞き取り調査を行う。・中国の国際学会「International Symposium on Central Asian Philology」(10月)に参加することを予定している。そこに参加し研究発表を行うと同時に、研究者と打ち合わせを行う。・国内の研究機関(東京大学、東洋文庫など)に行き、本研究に関連する古典チベット語文献を調査する。・英語論文を出版する予定のため、英語校正を業者に依頼する。・古代~近代のチベットにおける税制・土地制に関連する書籍を収集し、古代の統治体制の一端を明らかにするために使用する。またあわせて、中国、インド、西アジア等、チベットの周辺に存在した国家における統治体制に関連する書籍を収集し、チベットの統治体制とそれら周辺国家とを比較検討するために使用する。
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Research Products
(5 results)