2012 Fiscal Year Research-status Report
古チベット語史料による古代チベット帝国の統治体制の研究―税制と土地制を中心に
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23720347
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
岩尾 一史 神戸市外国語大学, 外国語学研究科, 研究員 (90566655)
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Keywords | 古代チベット帝国 / 吐蕃 / 敦煌 / 税制 / 会計 / 土地制 / チベット語 |
Research Abstract |
出版:論文“Preliminary Study on the Old Tibetan Land Registries from Central Asia”を『語言背後的歴史:西域古典語言学高峰論壇論文集』に発表し、現存する古チベット語土地文書を整理することができた。また論文「古代チベット帝国の敦煌支配と寺領:Or.8210/S.2228の検討を中心に」を『敦煌寫本研究年報』第7號に発表し、古代チベット独自の制度mkhos(土地・財産区画)が、農地のみならず牧地(牧群)にも行われていたことを明らかにすることができた。 口頭発表:国際学会The third International Seminar of Young Tibetologistsにて“Frontier soldiers and the taxation of the Old Tibetan Empire”を発表し、前線の兵士たちと彼らに対する徴税について考察した。また、国際学会『西域-中亜語文学国際学術研討会』にて“A preliminary study of an Old Tibetan land registry preserved in the National Library of China”を発表し、新発見のチベット語土地文書(中国国家図書館所蔵)の紹介と内容検討を行った。 調査:フランス国立図書館に行き、古代チベットの税制・土地制関係の文書を調査することができた。また、東洋文庫において古チベット語文書若干点の調査をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・9月、予定していたとおりフランス国立図書館にて文書調査を行い、税制関係文書を実見することができた。 また、予定のとおり京都大学、東洋文庫などで関係史料の収集を行った。なお、当初本年度に予定していたインド・ダラムサラでの調査とイギリスの大英図書館における調査は、昨年度にすでに実施済みである。 ・予定どおりに第三回国際若手チベット学者会議にて税制関係の口頭発表を行い、会場からフィードバックを得ることができた。さらに11月、北京での国際学会にて土地文書についての口頭発表を行うことができた。 ・余力があれば行う予定であった中国・台湾・ロシア所蔵文書の調査のうち、中国の国家図書館での調査を試みたが、折悪しく関係する閲覧室の改修にあたり、実現できなかった。 以上のような進展状況からみて、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
・研究が推進するにつれ、新発見の文書や解読データが予想以上に集まった。また、この二年間において、関連する新研究も内外で出版された。本年度は、これらデータをまとめて出版することを第一の目標としたい。 ・特にチベット語で記された土地文書については前年度までに全てデータが集まったので、それを元にチベットの土地制度についての総合的考察を試みる。また前年度、新たに一件の土地文書(中国国家図書館蔵)を発見することができた。本文書は従来の土地文書とは全く異なる新しいタイプのものであるので、集中的に解読を進めたい。 ・税制については、現在までに集積した文書データを一旦まとめ、総合的に分析して、チベットの税制が如何なるものであったのか、その全体像を提示したい。 上記の目標に合わせ、先の二年間に引き続き、出土文書の実見調査を継続したい。具体的には大英図書館、ロシアの東洋写本研究所もしくは北京の国家図書館にて調査する予定であるが、ただし収蔵機関の状況(閲覧室修復中など)によっては、他の所蔵機関での調査を優先したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・イギリスの大英図書館(ロンドン)に出張し、中央アジア出土チベット語文書、漢語文書の実見調査を行う。また、収蔵機関の受入状況によって、ロシアの東洋写本研究所(サンクトペテルブルグ)かもしくは台湾(台北)、中国の国家図書館(北京)に行き、中央アジア出土文書の実見調査を行う。 ・The Thirteenth International Association for Tibetan Studies(ウランバートル、7月)をはじめとする国際学会に参加し、研究発表を行うと同時に、参加する研究者たちと情報交換を行う。 ・国内の研究機関(東洋文庫など)に行き、本研究に関連する古典チベット語文献、また関連する書籍・論文を収集する。 ・英語論文を出版する予定のため、英語校正を業者に依頼する。 ・古代~近代のチベットにおける税制・土地制度に関連する書籍・論文を収集する。また、中国、インド、西アジア等、チベットの周辺に存在した国家における統治体制関連の書籍を収集する。
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