2012 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半エジプトにおけるスーフィー教団とパン=イスラーム主義
Project/Area Number |
23720350
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
高橋 圭 上智大学, 付置研究所, 研究員 (60449080)
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Keywords | イスラーム / スーフィズム / スーフィー教団 / タリーカ / パン=イスラーム主義 / エジプト / 東洋主義 |
Research Abstract |
本研究は、パン=イスラーム主義の展開を基軸に据えながら、20世紀前半のエジプトにおけるスーフィー教団と当時の政治社会思想・運動との関わりを実証的に解明することを目的とするものである。具体的にはアズミー教団の導師が創設した「カリフ再興団体」とバクリー教団の導師が団長を務めた「東洋連盟」の二つの団体を事例として取り上げた。 初年度は国内外での一次史料の調査・収集作業に集中しつつ、「カリフ再興団体」の母体であったアズミー教団に焦点を絞って分析を行った。その結果この団体結成の背景として、教団導師の積極的な政治参加や、教団そのものの組織的革新性が見られたことを明らかにし、その成果を日本オリエント学会第53回大会において報告した。同時にこの教団を母体に創設された団体が他にも複数存在していたことも分かっており、今後は他の団体の実態と合わせて教団の組織や活動の全体像を把握する作業が必要であることも明らかとなった。 今年度は国内での史料の調査・収集作業を継続しつつ、「東洋連盟」の実態の解明に努めた。「東洋連盟」は自らを非宗教性・非政治性を謳う文化団体と位置付け、実際に多様な宗教的・政治的背景を持った知識人たちが参加していたが、調査者は団体のこうした性格がスーフィー導師を始めとする宗教名士たちが伝統的に開いてきたサロンの文化を継承したものであると結論付け、これを日本中東学会第28回年次大会で報告した。新たな課題としては、この団体の理念である東洋主義やその多岐に渡る活動の意義を検討することにある。特にこの団体が日本や中国といった非ムスリム諸国との連携を模索していた事実については今後さらに掘り下げて調査をする必要があるだろう。 今後はまず本研究課題の成果をとりまとめて口頭発表や学術論文として発表しつつ、研究の進展に伴って新たに生じた問題点の解明に取り組むべく、さらなる調査を継続する予定である。
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