2013 Fiscal Year Research-status Report
近代中央アジアの多民族社会と帝国の統治:新疆イリ地方の事例から
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23720353
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野田 仁 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 講師 (00549420)
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Keywords | カザフスタン / ロシア / 新疆 / 国際関係史 / 民族 |
Research Abstract |
本研究は、現在の中国新疆ウイグル自治区北部のイリ(伊犂)地方の歴史に着目し、19世紀後半~20世紀初頭の露清帝国の文書史料(ロシア側はおもにカザフスタン、清朝側は北京および台北の各機関に所蔵される未公刊文書)を調査・分析し、すでに公刊されているロシア・清朝の歴史史料とも比較しながら、イリ地方を中心とする中央アジア諸集団の紛争解決の事例と、帝国側の多民族統合・統治のために施された政策との相関を検討するものである。それにより、近代中央アジアにおける複雑な多民族社会において発生する諸問題を住民がどのように解決しようとしていたのか、また、統治側であるロシア帝国が、あるいはイリ地方の中国への返還後は清朝が、どのように異民族間の紛争にかかわり得たのかを考察し、近代の多民族社会における社会統合の問題を解明することを目的としている。 3年度目にあたる本年度は、ロシア・清・現地の諸集団の間で行われていた国際集会裁判に注目し、19世紀末から20世紀初頭にかけての当地域の秩序安定化にとって、この裁判制度が果たしていた役割を明らかにし、成果としてまとめた。北海道大学スラブ研究センター(ロシア帝国軍事歴史文書館所蔵文書の写し)および台湾故宮博物院・中央研究院(清代の档案史料)において追加の調査を行い、関連する公文書史料を収集した。 上の成果の前提として、この時期のイリ地方をめぐる司法制度の基盤となっていたロシア帝国側の中央アジア現地住民に対する司法・裁判の制度についても情報を整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外調査を含む史料収集・文献調査を実施し、それらの内容を整理・分析することにより、ロシア帝国が意図する紛争解決、また露清の二帝国に中央アジア諸集団を交えた3者間での治安維持が図られていた状況を明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ロシア統治期を含め、イリ地方にかかわる法制度がロシア帝国のものに大きく依拠していることが明らかになってきたため、改めてロシア帝国側の法制、裁判制度における中央アジア諸集団の扱いについて検討した上でまとめの考察を行いたい。その一方で中国(清)側も消極的ながらこの地域の集団の掌握に努めていたことはたしかであり、その方針について、近年公刊された公文書史料などに拠りながら明らかにする作業も行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料整理のための人件費分として確保していた額を、雇用者の見込みがつかず、次年度に繰り越すことになったため。 発生した次年度使用額については、ロシア帝国の文書史料を含む文献資料の整理のために人件費として使用する計画である。また翌年度分助成金については、国外ではロシア帝国関連公文書史料の調査、国内では北海道大学所蔵文献の調査のための旅費を予定している。引き続き、関連する和洋書の研究文献を購入するための物品費の支出も予定する。
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