2012 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半期南アフリカのカラードとブリティッシュ・アイデンティティに関する研究
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23720363
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
堀内 隆行 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (90568346)
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Keywords | 西欧近現代史 / 南アフリカ史 / イギリス帝国史 / カラード / ブリティッシュ・アイデンティティ |
Research Abstract |
本研究は、20世紀前半期南アフリカのカラードとブリティッシュ・アイデンティティとの関係を探るものである。このアイデンティティの開放性、多文化性を強調する近年の研究を批判的に検討しつつ、イギリス帝国の植民地支配がカラードに親英であることを強いた状況の解明を目的としている。 こうした目的を達するため、本年度は2本の論文を執筆した。 「イギリス帝国、ケープ、南アフリカ」(『新しい歴史学のために』281号、2012年10月)は、同誌の特集「ヨーロッパ史における地域・国家・ネットワーク」の一部である。19-20世紀のイギリス帝国と植民地、帝国とケープ/南アフリカ、20世紀のケープと南アフリカそれぞれの関係を順次検討した。とくに小説家A・トロロープ(1815-82年)、歴史家J・A・フルード(1818-94年)、評論家R・ジェブ(1874-1953年)などがイギリスと南アフリカを行き来して各々のネットワークを構築し、帝国の結束に貢献していたことを明らかにし、特集の主題に資した。他方で、19世紀以来の非ヨーロッパ系(後年のカラード)の境遇の変化をたどるとともに、20世紀前半期のカラードとブリティッシュ・アイデンティティとの関係も概観し、本研究を進めていくうえでの足がかりを得た。 「19-20世紀転換期の南アフリカと法の混合」(『19世紀学研究』近刊)は、同誌の特集「法典化の19世紀」の一部である。南アフリカ連邦最高裁判所の初代長官(1910-14年)を務めたJ・H・デ・フィリアースが、ローマン・ダッチ・ローとイングランド法の混合をとおしてオランダ系とイギリス系の架橋を図り、そのことがカラードの排除につながったことを明らかにした。 このほかシンポジウムでコメントし、また高校教員を対象に「イギリス帝国と人種・エスニシティ」(於大宮、2012年3月)と題して講演するなど社会還元にも努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2本の論文を執筆できたことなどは「進展している」と評価しうるが、カラード・ヨーロッパ人協議会などの研究に着手することはできなかった。これについては来年度論文を執筆する予定である。 なお、カラードと第一次世界大戦の関係にかんしては昨年度研究を終えており、来年度公刊する予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前項の内容と重複するが、今後はつぎの二点について研究を進める。 一点目はカラードの政治運動について。これにかんしてはジェンダーの視点もとり入れていく。南アフリカなどでの史料調査をふまえて、年度内に論文を執筆する。 二点目はカラードと第一次世界大戦の関係について。これにかんしては昨年度研究を終えており、年度内に公刊する予定。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
南アフリカ史関係図書の購入、日本西洋史学会・日本アフリカ学会の参加費などのほか、南アフリカなどでの史料調査の旅費が必要となる。
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