2011 Fiscal Year Research-status Report
近世イングランド帰化制度の変遷とその重要性・近世的特徴
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23720367
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 順子 熊本大学, 文学部, 准教授 (00324731)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 帰化 / デニズン / 複合国家ブリテン / 王政復古 / 近世イングランド |
Research Abstract |
研究計画に従い、平成23年度は、17世紀前半における帰化制度の制度史的変遷と帰化・デニズン取得者の実態について、「複合国家ブリテン」内の人々を対象に含めつつ、研究を進めた。16世紀後半の事情と比べたとき、イングランドのナショナリティ、他者と自国の画定に関しては、多層的であると同時に、「複合国家ブリテン」の存在が大きく関与していることが明らかになった。後者についは、これまでの帰化研究にはない、新たに明らかにされた点である。この課題については、すでに研究成果を脱稿し、論文集所収論文として刊行の準備が進んでいる。 引き続いて、王政復古期における帰化制度と帰化・デにズン取得者について、『イングランドにおける外国人のためのデニズン許可証ならびに帰化法』の分析を進めた。1680―1700年に関する先行研究はあるが、当該時期については、本研究の研究成果が領域初めてのものとなる。取得者の特徴として、17世紀前半と比べて、共和政を経て、海外生まれのイングランド人の子どもの復権が急増すること、その一方で、大陸出身者にも帰化取得者が増加すること、デニゼイションが存続されることから、帰化との区別がますます進行することが明らかになった。結果として、ナショナリティの境界画定の論理が、体制や社会の変化により、「複合国家ブリテン」から大陸や帝国にシフトしていることが明らかになった。本研究成果についても、すでに論文として発表した。 また、第2の研究課題であり、ナショナリティと差異化の問題の重要な対象であるユダヤ人については、ロンドンの大英図書館にて文献調査、史料収集を行った。また、ブリテン内外(北米を含む)の帰化についても、ナショナル・アーカイブスにおいて、史料調査・収集を実施した。それに先立ち、第16回ワークショップ西洋史・大阪において、17世紀における他者と差異化について、予備研究の成果報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の計画目標のひとつである、王政復古期に関する調査・分析は実施し、論文としてその成果を発表することができた。17世紀前半についても、これまでの研究に「複合国家ブリテン」という観点を加えて、研究成果を研究論文として成果を発表した。王政復古期については、史料分析、予備考察にとどまったので、今後社会的・歴史的背景に則したさらなる分析・考察の必要がある。 ユダヤ人に関する史料調査もイギリスで行い、基本的な二次文献や刊行史料は収集できた。前者については、その成果のさらなる考察が、後者については収集した史料・文献の読み込みが課題となる。差異化の問題については、二次文献とこれまでの研究成果をベースに研究動向と研究成果の一部を、学会報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
未使用額が発生した理由は、全額支給が実施されない可能性を考え、夏休みの渡英を見送ったことと、23年度後半は担当した複数の学内委員業務が繁忙であったため、当初予定していたイギリスでの調査の日程を縮小しなければならなかったことにある。今年度は当初の計画に即しつつ、イギリスでの調査日程を延長することで、調査の遅れを取り戻す予定である。学内業務の調整と研究時間の確保が最大の課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用計画に変更はない。 物品費30万円、旅費55万円、人件費・謝金0円、その他5万円の計90万円。昨年度の未使用額については、イギリスでの調査日程の延長に使用する。
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