2013 Fiscal Year Annual Research Report
近世イングランド帰化制度の変遷とその重要性・近世的特徴
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23720367
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 順子 熊本大学, 文学部, 准教授 (00324731)
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Keywords | 移民 / 帰化 / 近世イングランド |
Research Abstract |
最終年度である本年は、前年度までの研究成果をもとに、近世イングランドにおける帰化制度の歴史的変遷と法的地位取得者の実態について、17世紀前半を中心に総括を行った。17世紀前半がイギリス国籍史上極めて重要な時期であることを、帰化制度における近世的特徴として出生地主義や信仰、デニズンという地位の重要性を、制度の内容とその歴史的変遷と取得者の実態から明らかにした。その研究成果を、国際学会第5回日韓イギリス史会議(6月20日~22日 韓国釜山開催)にて報告した。報告原稿は抄録集に掲載された。その報告において、次の研究課題である、出生地主義に基づくナショナルなレベルのナショナリティの定義とはことなる草の根レベルのraceに基づく自己認識(国民意識)の有り様がみられることを提示した。 年度後半は、学会報告で提示した草の根レベルの自己認識と他者に対する法的地位を明らかにするべく、16世紀後半のロンドンに在住する外国人の第二世代に焦点をあて、外国人調査を史料とし彼らの実態分析を行った。16世紀後半、イングランド出生の移民2世の人数が増加したが、そのような彼らは原則生まれながらのイングランド人同様であるにもかかわらず、外国人としてその存在と権利が問題視されていたことが明らかになった。その研究成果の一部は論文として刊行した。 この間の研究を通じて、他者認識と法的地位の論理において、重要な概念としてraceに注目すべきことが明らかになったが、その現実的対象として外国人の第二世代に加えて、ユダヤ人や黒人の存在が挙げられる。それを踏まえてユダヤ人や黒人に関する基礎的な研究や資料調査を行った。
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