2014 Fiscal Year Annual Research Report
トライボロジーによる石器機能推定の高確度化とその応用による先史狩猟採集民研究
Project/Area Number |
23720376
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鹿又 喜隆 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60343026)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | トライボロジー / 石器使用痕 / ロシア / モンゴル / エクアドル / 後期旧石器時代 / 縄文時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究には大きく6つの研究目的があり、それらに対する成果を以下に述べる。(1)石器使用痕の形成メカニズムを整理し、その合理的な理解に努めた。使用痕光沢は主に流体潤滑膜の介在する摩擦状況(流体摩擦・境界摩擦)で生じるが、その概観は固体面摩擦の影響も加わっている。そのため、被加工物の形状や硬度、含水量などに応じて、使用痕光沢の特徴・タイプが異なることが理解できた。(2)新たに101回の石器使用実験を追加した。これらは、石器使用痕光沢の形成過程を理解する資料となったのみならず、遺物分析を通して不足と判断された実験条件下で実施されたため、使用痕分析の精度を高める結果となった。(3)遺跡出土資料に関しては、国内外の多くの先史時代遺跡出土資料を対象にした使用痕の同定を通して、分析精度を高めることができた。(4)石器の埋没後の表面変化については、黒曜石製と頁岩製の違いを遺物分析と実験研究から比較した。(5)後期旧石器初頭(約3万6千年前)から縄文時代晩期(約2800年前)までの遺跡を対象とした。丘陵上の遺跡から低湿地遺跡まで含まれ、多様な環境への適応行動が読み取れた。ロシア、モンゴル、エクアドルの資料も分析したため、人類の普遍的な環境適応行動を理解するための基礎研究となった。(6)石器付着残滓の分析については、焼礫付着物の抽出などを試みたが、十分な試料を得られなかった。そこで、日本とエクアドルの土器出現期における土器内容物の分析を通して、石器の使用内容との対比・検討をおこなった。平成26年度には、福島県笹山原No.27遺跡、長崎県福井洞穴の資料報告と共に、本研究の内容を公開した。また、エクアドルでの研究成果は、スペイン語で公開され、同年に実施されたリアルアルト遺跡の発掘調査についても、成果報告が準備されている。
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