2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720377
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅野 智則 東北大学, 埋蔵文化財調査室, 一般職員 (30400196)
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Keywords | 考古学 / 縄文時代 / 集落 |
Research Abstract |
本研究は、縄文時代における居住形態の様相について把握することを目的としている。最終年度となる平成25年度には、総合的な分析と考察を行った。 ①仙台湾地域における前期前葉には、方形プランを基調とする竪穴住居跡が集中する集落遺跡が認められる。このような集落遺跡は、遺跡の継続性等の点からも早期以来の継続的な集落とは考えづらく、新たに作られた拠点的な集落遺跡であることが窺える。しかし、その後にはそのような集落遺跡は継続しない。一方、前期前葉後半の北上川中流域には、長方形大型竪穴住居跡を主体とする集落遺跡が展開するようになる。この時期は、地域性が顕在化する時期として捉えられる。 ②北上川流域では、中期前葉には長方形大型住居跡主体の集落遺跡は消失し、小・中規模の集落遺跡が継続的に出現する。中期中葉には、竪穴住居跡の数も増加し、規模の大きな集落遺跡が増えると共に、山地内にまでも資源活用を目的とした小規模な集落遺跡が進出する。この中期前葉から中期中葉の時期を、前期的な集落の解体からの変質期と捉えた。そして、この変質は、この時期の集落遺跡の特徴・継続性等から各地域における文化の漸移的変化、そして地域間関係を背景とした穏やかな変質として理解した。 ③北上川中流域では、中期後葉前半に新たな場所に集落が形成され、そこを拠点とし遺跡数が増加する。中期末葉前半には、山地内部を含め小規模集落遺跡が著しく増加し、縄文時代の中で集落遺跡数が最大となることから、遺跡間関係が最も複雑化した時期として捉えられる。中期末葉後半には、特定の居住地への集中化が認められる。それは、新たな居住地の形成とも考えられるが、直後の後期初頭・前葉には消失する。 このような集落遺跡の盛衰からは、縄文時代の文化的特徴が必ずしもある場所で固定的、直線的に発生・展開するものではないことがわかる。むしろ、かなり流動的な様相が想定できる。
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