2012 Fiscal Year Annual Research Report
アンデス文明形成期の神殿の成立~衰退の背景を村落機能・地域間ルートに着目して解く
Project/Area Number |
23720380
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴見 英成 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (00529068)
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Keywords | ペルー / アンデス / 文明 / 神殿 / 形成期 / 定住 / 地域間交流 / 考古学 |
Research Abstract |
南米大陸アンデス地域の諸河谷に、神殿建築を中核とする定住村落が成立した時期をアンデス文明の形成期と呼ぶ(前3000~50年)。神殿の存在は文明形成に大きく寄与したとされるが、その発生の背景については議論が不十分である。本研究では定住村落としての機能に着目し、神殿の成立から衰退までの過程を経済・技術などの側面から考古学的に解明し、その背景に迫る。また「他の谷との間を結ぶ南北方向のルートと、東西方向のルートそのものである谷との交差点から定住が開始した」という仮説を立て、検証課題に含めた。この目的に即し、河谷の1つヘケテペケ川中流域におけるモスキート遺跡とレチューサス遺跡の発掘(平成23年度)、絶対年代測定(24年度)、さらに周辺地域を含めた北部ペルー広域踏査(24年度)を実施した。 代表者はこれまでヘケテペケ川中流域にて形成期前期(前1500-1200年)・中期(前1200-800年)の神殿群の成立・衰退過程を解明してきたが、モスキート遺跡にてそれに先立つ形成期早期(前1500年以前)の神殿群を確認した。先行研究に照らすと、これが流域最古の神殿である蓋然性は高い。一方レチューサス遺跡が形成期後期(前800~500年)に創設され、比較的短期間で放棄された、中流域最後の神殿であるとの見通しも得られた。 広域踏査では、ヘケテペケ川中流域から南方の諸河谷に向かって想定されるルート上を訪れ、5地点にて神殿や岩絵などの形成期遺跡を発見し、南北方向ルートの実相を解明した。とくにモスキート遺跡同様の形成期早期、および続く形成期前期の遺跡群は、「ルート交差点における神殿の成立」という仮説を検証する上で重要な発見となった。 本研究は計画通りのデータ収集を達成し、また定住村落の成立と山間部を貫く地域間関係を関連づけたことにより、山岳部で展開したアンデス文明の特色を人類史に位置づける上で重要な成果を挙げた。
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