2011 Fiscal Year Research-status Report
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23720383
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
三吉 秀充 愛媛大学, 法文学部, 助教 (50284386)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 初期須恵器 |
Research Abstract |
地方窯の実態解明ならびに須恵器流通の実態解明に向けて今年度は、(1)松山平野南部に所在する伊予市市場南組窯跡の発掘調査と出土遺物の整理・分析、(2)窯跡出土初期須恵器の特徴の抽出作業の2点から研究を進めた。 (1)に関しては、2012年2月から3月にかけて、市場南組窯跡6次調査を実施し、谷部に形成された明確な灰原層を確認することができた。また当初の計画にはなかったが、窯跡周辺の地形測量を実施した。以上の発掘調査成果ならびに周辺地形の測量成果から、市場南組窯跡周辺における古地形(尾根や谷部)の復元が可能となった。これまで窯跡に残されていた窯体と灰原との対応関係について不明であったが、今年度の成果から、窯体と灰原との対応関係が想定できるようになった。今年度は、灰原層自体の掘り下げは行えなかったが、発掘調査で出土した須恵器の中には、従来知られていなかった須恵器の器種なども見られ、窯跡で生産されていた器種組成の実態についても明らかにすることができた。 (2)に関しては、当初計画では大阪府陶邑窯跡ならびに岡山県奥ヶ谷窯跡を研究対象とする予定であったが、2011年8月香川県宮山窯跡において本研究と関連の深い初期須恵器窯跡の発掘調査が行われていたことから、宮山窯跡の現地調査を行うと同時に宮山窯跡出土遺物の特徴などについて検討を行った。なお、大阪府陶邑窯跡ならびに岡山県奥ヶ谷窯跡資料に関しては、実地調査は行わなかったものの報告書等から分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では地方窯の実態解明が目的であるが、市場南組窯跡における発掘調査では谷部に形成された明確な灰原層を検出することができ、出土遺物に関してもこれまで確認されていなかった資料を確認できている。窯跡周辺における灰原層の上部に堆積する表土層の厚さが予想以上であったものの、おおむね計画通りと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も市場南組窯跡において本格的な発掘調査を実施する。今年度は谷部で形成された明確な灰原層を検出することができたものの、灰原層の本格的な調査には着手できなかったことから、次年度は特にこの灰原層の本格的な調査に取り組む予定である。これらの調査で出土した遺物の整理(水洗・注記・接合作業)を進め、市場南組窯跡で生産されていた須恵器の組成を明らかにする。既存の出土遺物(表面採集資料)との接合関係を確認する。また出土遺物の胎土に関して、自然科学的な分析を実施し、その特徴について整理を行う。 消費地出土資料の分析に関しては、松山平野ならびに岡山平野における出土資料の調査を行い、産地推定を行った上で、遺跡・遺構の性格、出土状況ら分析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究費残額は27万円である。このうち約20万円は、2012年3月に実施した発掘調査に伴う謝金等として支払い予定である。残りの約7万円は、発掘調査の成果に関して客観性を保つために、外部研究者の招聘費用として計上していたものである。招聘予定の研究者の日程の問題もあり執行できなかったため、次年度実施予定の発掘調査あるいは出土遺物検討会の開催時に予算の執行を予定している。 次年度の研究費の使用計画については、まず発掘調査に伴う謝金等に約40万円、発掘調査に伴う消耗品に約5万円を予定している。また消費地における須恵器の実態調査の資料調査に伴う旅費として15万円、須恵器の胎土分析の予算として約10万円を予定している。
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Research Products
(1 results)