2013 Fiscal Year Annual Research Report
古代マケドニアの葬制にみる伝統的文化構造とその変容に関する考古学的研究
Project/Area Number |
23720389
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
松尾 登史子 九州共立大学, 経済学部, その他 (00598998)
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Keywords | 古典考古学 / ギリシア / 古代マケドニア / ヘレニズム / 葬制 / 建造墓 / 室形墓 / 火葬 |
Research Abstract |
本研究の目的は、古代マケドニア葬制研究により伝統的文化構造を見出し、これが外来文化を受容・融合し変容する過程を解明し、後に顕在化する普遍文明的要素の萌芽を抽出することであった。前年度までは、王都ペラの墓所分析にてマケドニアの都市建設、特に植民活動の重要性を認識する視点を得、旧王都ヴェルギナの墓所分析に着手した。王国の形成・拡大過程で制圧した周辺在地民を取り込み上層部をも再編していく様相が埋葬形態にあらわれるとみて分析を進め、埋葬形態の採用・選択、特に土葬・火葬の相違が民族的出自に依存するという可能性を見出した。 当該年度は、墓類型の体系化を継続しつつ、ヴェルギナ墓所分析を特に箱形墓を含めた建造墓の埋葬方法に着目して遂行した。室形墓が王族級の墓であれば同規模を持つ箱形墓も同等階層あるいは少なくとも社会上層に属するとみなされ、両墓の相互関係の検討により上層社会の一端を解明し得るとの見通しの下、これらの土葬・火葬の選択理由を検討するために、埋葬方法と時期、埋葬主体部規模との相関をみた。その結果、両墓の盛衰につき、箱形墓は王国存続期に一貫して造営された一方、室形墓は前4世紀第3四半期に突如として出現しそれ以降造営されたこと、全時期を通じて室形墓は箱形墓よりも規模が大きく、階層的には上であること、が示された。更に、埋葬形態の変遷から、古代マケドニア人は基本的に土葬の風習をもつがフィリポスII世期以降、特に東征を画期として帰葬などの実用的な理由により火葬を選択する頻度が増加した可能性があること、が明らかになった。この結果から、埋葬形態と民族的出自の相関は低く、むしろ建造墓両類型の建築構造自体の比較分析から外来・自生の技術を見極めることの重要性が浮き彫りとなった。この際、ヴェルギナとペラに加え旧都ミエザ(コパノス・レフカディア)の特徴的な室形墓を含めた視点について新たな知見を獲得し得た。
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Research Products
(1 results)