2011 Fiscal Year Research-status Report
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23720396
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
廣瀬 覚 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (30443576)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 飛鳥時代 / 石工技術 / 三次元計測 |
Research Abstract |
本研究は、三次元計測の手法を用いて、飛鳥地域を中心に石材加工にかんするデータを収集し、飛鳥時代の石工技術を詳細かつ体系的に復元することを目的とする。 本年度は、まず、二上山産出の白色凝灰岩を使用して構築された高松塚古墳、キトラ古墳の石槨における石材加工痕跡の整理、分析をおこなった。奈良文化財研究所が保管する調査資料(拓本、写真、三次元画像など)をもとに、技法の分類と工程復元に取り組んだ結果、凝灰岩における「切石」とよばれる直線的な石材加工の本質が、朱線による割付とチョウナ叩き技法の駆使にあることが明らかとなった。また、同じチョウナ叩き技法であっても、仕上げのための下地づくりとしての粗い加工と、最終仕上げとしてのより丁寧な加工の二者があることが判明した。凝灰岩は軟質で加工は容易であるが、反面、乱雑な加工は石材の破損を招く。一見すると切断機を使用したかのような「切石」の実態は、石材破損の危険性を回避しつつチョウナによる敲打を丁寧に集積させた結果と理解できる。 こうした石工技術の実態をふまえて、おなじ二上山産出の白色凝灰岩で構築された香芝市平野塚穴山古墳の石槨において三次元レーザー測量調査を実施した。調査の結果、石槨構造や石材の規格性、石材加工の状況が明らかとなり、高松塚古墳やキトラ古墳との石工技術や使用尺度の共通性を確認できた。また、玄室部分が南に2度前後で傾斜していることも判明した。こうした石槨の細部の傾きは高松塚古墳やキトラ古墳でも確認されており、石槨内に浸入する雨水の処理を意図したものと考えられる。 なお、本年度の研究成果の一部は、第108回奈文研公開講演会、および『奈文研紀要2012』(2012年6月刊行予定)において公表する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高松塚古墳、キトラ古墳の凝灰岩資料を用いて、石材の加工痕跡および技法の基本的な分類、および工程復元をおこなうことができ、次年度以降に他遺跡の資料に観察、分析、記録を展開していける基盤を整えることができた。また、遺構(石室、石槨等)レベルの計測作業として、香芝市平野塚穴山古墳の横口式石槨の三次元計測調査を実施したことにより、高松塚古墳、キトラ古墳との比較材料を取得することができた。石組みや全体設計の共通性と差異、設計規格と個々の石材切出し寸法との関係などを、高い精度で分析するための素材となる。 ただし、石材加工痕跡のデータの蓄積は、機器の問題から野外での計測が困難なこともあり、やや作業が遅れている。高松塚古墳、キトラ古墳、平野塚穴山古墳の間では技法の共通性も確認できており、今後、他遺跡出土石材のデータも含めて、加工痕跡そのものを三次元データとして記録、提示していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は1遺跡にとどまった遺構(石室、石槨等)レベルの計測作業をさらに増加させ、比較材料の蓄積を継続する。引き続き、二上山白色凝灰岩製の石槨を中心にデータ収集を進めるとともに、花崗岩製の石室、石槨も対象に加えることにより、異なる石材間での共通性や相異の検討に着手する。 また課題となっている石材加工痕跡の計測については、今年度は、奈良文化財研究所が所蔵する宮殿、寺院出土の基壇外装石材を中心に室内での計測作業を進め、作業性の向上を図る。その成果を踏まえて、来年度以降は、他機関所蔵資料および野外資料での計測へと展開していきたい。 以上のようなマクロ、ミクロな視点からの計測、分析作業を進めるとともに、同時代の朝鮮半島の石工技術の実態も念頭におきながら、飛鳥時代の石工技術の体系的な把握、復元に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分は三次元計測作業の業務委託費として使用する。遺構(石室、石槨等)の計測、石材加工痕跡の計測回数を増やし、平成23年度未使用額の多くをこれに充てる。 旅費では、成果報告および意見交換のための学会参加2回程度、朝鮮半島の石工技術調査のための韓国への旅費を見込んでいる。物品費としては、必要図書類、データ保存用メディアの購入等を計画している。
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Research Products
(1 results)