2012 Fiscal Year Research-status Report
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23720396
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
廣瀬 覚 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 研究員 (30443576)
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Keywords | 飛鳥時代 / 石工技術 / 横口式石槨 / 基壇外装石 |
Research Abstract |
2年目となる本年度は、二上山白色凝灰岩製の横口式石槨1基(羽曳野市野中寺所在のヒチンジョ池西古墳出土横口式石槨)、基壇外装石材3点(豊浦寺、大官大寺ほか)の三次元レーザー測量調査を実施した。 羽曳野市ヒチンジョ池西古墳の石槨は、以前から、昨年度計測を実施した香芝市平野塚穴山古墳石槨とともに、高松塚・キトラ古墳石槨との構造的な類似性が指摘されてきた。今回、その詳細な三次元レーザー測量を実施したことにより、本研究所が有する高松塚・キトラ古墳にかんするデータとの比較が可能となり、この種の横口式石槨の構築過程や石工技術、型式変遷に関する理解を深めるための研究基盤を整えることができた。 一方、後者の基壇外装石材としては、奈良文化財研究所が所蔵する飛鳥藤原地域出土資料を対象としたもので、いずれも二上山白色凝灰岩製である。豊浦寺、大官大寺、出土地不明の3点であるが、豊浦寺例については接合面の加工状況から奈良時代の補修時のものである可能性が、大官大寺例については形状や表面に残る痕跡から講堂基壇が延石を用いた壇上積基壇であった蓋然性が、高まった。また、出土地不明石材については、完存する地覆石であり、表面の遺存状態が極めて良好であることら、チョウナ削り・叩き技法の状況を詳細に観察・記録できた。出土地不明ながら、全体の形状や装飾のあり方から飛鳥時代のものとみて問題なく、当該期の石工技術を理解するうえで重要な資料となることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、古墳の石槨1基の計測にとどまったが、今年度は、新たに研究を遂行する上で重要となる古墳の石槨1基を計測するとともに、飛鳥・藤原地域の寺院・宮殿出土の基壇外装石材を計測の対象に加えることができた。 これにより、当初の目標であった飛鳥時代の古墳と寺院・宮殿間において、二上山白色凝灰岩の加工技術を比較・検討する作業にむけて、資料的基盤を整えることができたと考える。次年度以降、さらに計測資料の蓄積を進めることで、二上山白色凝灰岩を中心とする飛鳥時代の石工技術を、体系的かつ詳細に復元することが可能になると予想できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、当初、二上山凝灰岩のみならず、石英閃緑岩(飛鳥石)、石英安山岩(寺山石)、流紋岩質溶結凝灰岩(竜山石)といった、飛鳥時代に人工的に加工された石材全般を対象に掲げていたが、予想以上に検討対象とすべき資料が多く、昨年度までの段階では二上山凝灰岩製品に特化した調査研究となっている。 今後、上記石材のすべてを詳細かつ網羅的に検討することは困難と予想されるため、二上山凝灰岩における石工技術の全容解明を研究の中核に据え、必要に応じてその他の石材との比較・検討を行う方向に軌道修正することにしたい。具体的には、石英安山岩(寺山石)、流紋岩質溶結凝灰岩(竜山石)製の資料のうち、二上山凝灰岩の技法との共通性がうかがえる資料に対象を絞って、観察・計測作業を実施し、相互の関連性を追究していきたいと考える。その作業を通じて、軟質・硬質石材間の交流の実態が明らかになると期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様に、5物件程度の三次元レーザー測量調査を業者に発注して実施する。また、これまでの測量データにおいて補足的な画像処理が必要なものが1点あるため、それについては別途、予算を計上し、作業を進める。そのほか、適宜、関連資料の収集・調査、学会報告等で必要な書籍・旅費を執行する。
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Research Products
(2 results)