2013 Fiscal Year Research-status Report
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23720396
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
廣瀬 覚 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (30443576)
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Keywords | 石工技術 / 飛鳥時代 |
Research Abstract |
本年度は、まず、一昨年度、昨年度実施した香芝市平野塚穴山古墳、および羽曳野市野中寺所在のヒチンジョ池西古墳の横口式石槨のデータ修正および検討を行った。平野塚穴山古墳の石槨は外部を封土で覆われており、内部形状のみをレーザースキャンしているが、外部の形状についても、かつての調査図面・写真から推定で画像を作成し、内部からのデータと合わせて石組みのあり方を復元的に検討した。その結果、石材同士には複雑な仕口が設けられており、それにより石材相互が強固に接合されている様子が理解できるようになった。 これにたいして、ヒチンジョ池西古墳の石槨は、三次元レーザースキャニングにより外部の形状は詳細に記録できているが、内部については現在、保護用フレームが取り付けられていてデータ自体が取得できていない。これについては、平野塚穴山古墳の石槨構造を参照しつつ、細部のデータを確認することで、両者の構造に共通性がみられることを確認し、この結果を踏まえて、次年度、保存処置を行った際に作成された手測りの図面を用いて同部分の補足を行うこととした。 このほか、飛鳥寺出土の竜山石製石像物(用途不明)、薬師寺出土基壇外装石にたいする調査を実施した。さらに、これまでの研究成果の一部を、第236回「あすか塾」セミナーにおいて、「飛鳥時代の石工技術と高松塚古墳」と題して発表をおこなった。 最終年度となる2014年度は、補足的に2~3件の計測を実施した上で、二上山凝灰岩製の石槨、基壇の加工技術を中心に、これまでの研究を総括する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの資料の実見、計測作業の遂行により、飛鳥時代の寺院、宮殿の基壇外装石、古墳の石槨石材における加工技術を比較し、その共通性や差異を検討し得る基盤が整いつつある。とりわけ、二上山産出の白色凝灰岩に関する技術や使用方法については認識がかなり深まっており、製品の流通や製作集団の実像についても一定の結論が得られつつある。ただし、その他の竜山石や天理砂岩、飛鳥石、寺山安山岩など、同時代に使用された石材については、データ化が遅れており、最終年度の調査で補足を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度では、本研究を総括するにあたり、最も研究が進展している二上山凝灰岩における加工技術と石材利用の実態を柱に整理する。上述のように、竜山石や天理砂岩、飛鳥石、寺山安山岩などのデータ化が遅れているためである。ただし、これについては、最も生産・流通量の豊富な二上山凝灰岩のあり方が、当時の石工技術の中核を占めるとの見通しをもっており、その理解に基づいて、他の石材についても、来年度中にターゲットを絞って補足調査を行うことで、本研究の当初の課題をある程度、総括できるものと考える。 少なくとも、二上山凝灰岩における基壇外装石、石槨石材との比較の基盤はできあがっており、それに基づいてあわせて、寺院や宮殿、古墳の造営などさまざま需要との関わりのなかで、飛鳥時代の石材加工技術がいかに発達していったかを明らかにできるものと確信している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、予定していた業者委託による三次元計測が都合により実施できなかったため。 昨年度、未実施の業者委託による三次元計測を今年度中に、当初計画よりもやや規模縮小してを実施する。また、これまでの取得データを保存するためのメディア類の購入に充てる。
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Research Products
(1 results)