2011 Fiscal Year Research-status Report
北海道における作物産地の存続に関する農業地理学的研究
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23720398
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
仁平 尊明 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60344868)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 北海道 / 作物産地 / 農業地理学 / 農業集落地図データ / 基盤地図情報 / 春播き小麦 / 秋播き小麦 / 農業的土地利用 |
Research Abstract |
本研究は、北海道における作物産地が存続していくための要因を、作物産地の地域的な基盤と産地スケールの新しい取り組みに注目して解明することを目的とする。この目的を達成するために当該年度は、統計資料の分析、フィールドワーク、研究会等での発表を実施した。 まず、統計資料の分析では、農林業センサス農業集落の統計表、農業集落地図データ、基盤地図情報を使用して、GISで分析することにより、北海道における作物生産の動向を把握すると共に、研究対象地域を選定した。これらの資料は近年、政府統計の窓口からダウンロードが可能になった電子データであり、農業地理学での新しい活用方法を心板という点でも意義があると考えられる。 フィールドワークでは、景觀観察、土地利用調査、聞き取り調査を実施した。特に、統計分析を考慮して研究対象地域とした石狩平野の小麦産地では、2010年10月から2012年12月にかけて継続的にフィールドワークを実施した。その結果、畑作地帯における農業の複合経営(水稲、春播き小麦、秋播き小麦、豆類、野菜類)の実態が把握できた。これらの結果は、今後、小麦産地の存続要因を考察する上で、重要な資料になると考えられる。 研究会等での発表は、統計分析やフィールドワーク、および筆者のこれまでの研究を踏まえて、「エネルギー効率から見た北海道農業」(於:北海道大学学術交流会館大講堂)という演題で講演した。この講演では、エネルギー自給率が200%に達する北海道でも農業のエネルギー効率が低下していること、北海道の農業生産は地域的差異が大きいことを示した。エネルギー効率や食料生産というテーマは、今後、北海道における作物産地の存続要因を考察するために重要な視点になると考えられる。その他、地理空間学会例会での発表や、日本地理学会への参加を通して、他の農業地理学研究者との情報交換を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の達成度について、統計資料の分析方法を確立したという点では、当初の目的をほぼ達成したと考えられる。農業集落地図データや基盤地図情報などの新しい電子データを活用した研究方法は、査読雑誌の論文「GISとGPSを利用した農業の空間分析」、および図書「GISと地理空間情報」の分担執筆で発表することができた。これらの研究では、GPSを使用した農業的土地利用図の作成方法も検討している。GPSを使用した土地利用データの入手は、農地が広く整然と区分けされている北海道では、有効なフィールドワークの方法である。また、GISにより基盤地図情報と連携することによって、面積の測定や農業集落地図データーとの重ね合わせなど、様々な空間分析が可能になることも示された。しかし研究対象とした作物産地の存続要因に考察については、成果を論部として発表する段階まで進んでいない。その理由は、土地利用や農業経営のデータばかりでなく、農業政策、品種の開発と普及、栽培の歴史など、多角的な視点からの考察を可能にするために、多くの資料を分析する必要があるためである。これらの点については、来年度以降の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、論文の執筆と公表、フィールドワークの継続、および学会等での研究発表である。論文の執筆については、フィールドワークを実施した石狩平野の小麦産地の存続要因を考察して、速やかに査読雑誌に投稿することを目標とする。投稿する雑誌は、北海道地理学会の「地理学論集」を予定している。フィールドワークでは、石狩平野を対象地域として、小麦に加えて、水稲栽培の維持基盤を考察するための調査を実施する。石狩平野は日本でも最大級の水稲の産地であり、その動向は日本の水稲生産にも大きな影響を与えると予想される。また、研究の中間報告として、日本地理学会等の学会で発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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