2011 Fiscal Year Research-status Report
中国における企業立地環境の変化と立地調整に関する研究
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23720405
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 康久 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (10362302)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 自動車産業 / 発注方式 / 部品サプライヤー / 吉利汽車 / 長江デルタ |
Research Abstract |
本年度は,研究計画の提出の際に挙げた5つの調査の中でも,中国自動車産業の発展にともなう発注方式とサプライヤー分布の変容についての調査・研究を行い,その内容を,当該分野における全国的な査読付き学術雑誌に投稿・掲載させることに重点をおいて研究を行った. 具体的には,中国の自動車メーカーにおける部品の発注方式の変化について明らかにした上で,このような変化がサプライヤーの選択や分布にどのような影響を与えたのかという点について検討した.調査対象として大手民営メーカーである吉利汽車の低価格車と中高級車を事例として分析を行った.研究結果は以下のようになった.中国メーカーの発注方式は,サプライヤー間の競争を促し,調達コストを下げるために複数のサプライヤーから調達する複社発注が一般的であった.これに対して吉利では,近年,開発・生産を始めた中高級車の場合,外資系(特に日系)完成車メーカーと同様に,各部品に対して1つのサプライヤーから部品を調達する一社発注を行う例が増加している.加えて,高い技術力を持つ大手サプライヤーから一次部品に近いものを一括発注する例が増えており,品質が向上した反面,調達コストは上昇している.サプライヤー分布を見ると,特に高付加価値部品については,省内の中小サプライヤーからの調達は減少し,長江デルタ内外にある外資系等の大手サプライヤーから調達するようになっており,サプライヤーの分布は広域化していることが明らかになった. また,この研究以外にも,中国大連市に進出した日本語コールセンターの存続状況に関する研究と大手国有企業である東北特殊鋼有限公司の事業再編に関する調査と論文の執筆を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の一環として行った研究が「中国自動車産業の発展にともなう発注方式とサプライヤー分布の変容―吉利汽車を事例として―」というタイトルで日本地理学会編『地理学評論』(85-3)に論説として掲載されることになった。『地理学評論』誌は研究代表者が所属する地理学という学問分野の中では、日本国内でも最もサーキュレーションが高い雑誌であり、掲載に至るまでの審査も厳しいため、同誌への研究成果の掲載は、研究の進捗状況を図るための客観的な評価基準となりえる。これをもって代表者の計画以上の成果を挙げることができたと言ってもよいと考えている。 また、他の研究成果も地理科学学会編『地理科学』に投稿中の論文が1編あるほか、書籍(共著書)の1章として公刊予定の論文も1編ある。この2編の論文についても2012年度中には、公刊できる見通しである点も、計画以上の成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した2つの調査結果に関して、査読付き学会誌及び書籍(共著書)にてそれぞれ公刊する予定である。さらに、研究計画書にて研究協力者として名前を挙げた2人の大学院生と協力しながら、遼寧省瀋陽市に本社を置き、中国の代表的な産学連携企業として有名な東軟集団有限責任公司の発展状況と本社機能および事業所立地の変容に関する調査を行う。この調査については、本年度の時点で多少の予備的調査は行っており、同社が本社機能を地方都市である瀋陽市に残したまま、産学連携企業として、全国あるいは海外にも事業所を持つ大企業に発展していくことができた要因が解明されつつある。 加えて、研究計画に挙げたもう一つの事例調査である、中国進出日系企業の経営現地化に関する調査も進めていく計画である。こちらの調査も、現時点で多少の予備調査を行っているが、調査協力者の都合により、若干の計画の遅れは存在しているが、同一企業内においても、販売する製品の性質の違いにより、中国進出日系企業の人材現地化や権限委譲の程度は、部署・部門ごとにことなっていることが明らかになりつつあり、大変興味深い成果が得られることが期待できる。 これらの2つの調査については、2012年度中に調査を終え、2013年度に査読付き学術雑誌に投稿する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、研究協力者の個人的な都合により、助成を受けた研究費の一部を使用できなかったものの、繰り越し分は2012年5月の調査により使用する予定である。 本年度、新たに助成を受ける予算については、本年度実施予定の2つの現地調査および既に調査を終えた3つの調査を公刊するための費用として、使用する予定である。2012年度に関しては、研究費がやや不足する可能性すらあると考えており、調査研究は順調に進むと予想している。
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