2012 Fiscal Year Research-status Report
都市のシティズンシップに関する地理学的研究―ミラノ・社会センターの空間的実践―
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23720408
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
北川 眞也 三重大学, 人文学部, 准教授 (10515448)
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Keywords | 都市 / 地理学 / 社会空間 / イタリア / ミラノ / 社会運動 / 自律性 |
Research Abstract |
2012年5月には、昨年に引き続き、香港パプティスト大学で開催されたInternational Workshop on Urban Utopianism cum China-India Forum on Beyond Gentrificationというワークショップにおいて、'A Genealogy of the Occupy Movement: Spatial Practices of the Young Proletarians in Milan in 1970s'と題した発表を行った。また、2012年8月にはドイツ・ケルンで開催されたInternational Geographical Congress Cologne 2012において、‘Spatial Practices in Italian Autonomist Movements: “Taking over the City” by Milanese Social Centers’という発表を行った。 いずれの発表も、主に1970年代にイタリア・ミラノの社会センターが出現するに至る当時の政治的・社会的・文化的文脈を検討するものであった。これらの国際会議において、同様の関心を有する数多くの研究者と知り合い、刺激的かつ意義深い意見交換を行うことができた。 2013年2月には、イタリア現地調査を行ったが、ミラノの社会センターCox18、Piano Terra、Fornaceにおいてインテンシブなインタビュー調査と資料調査を行った。またミラノ市立図書館では、社会センター運動について報じる数多の新聞記事を収集することができた。これらは25年度の研究発展の基盤をなすものとなる。また書誌や論文を通して、現代の都市論やミラノの都市空間についての理解を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに行っている2度のイタリア現地調査によって、ミラノの社会センターに関して想像以上に多くの資料を入手できた。社会センターCox18の内部にあるプリモ・モローニ・アーカイブや、ミラノ市立図書館で収集した数多くの貴重な文書資料を入手したのみならず、社会センターの活動を行っていた人々、また現在行っている当事者たちへのインテンシブなインタビュー調査を通して、資料のみでは推し量れない様々な事実や考えを朗にすることができつつある。特に、Cox18やFornaceといった社会センターにおいては、繰り返しインタビュー調査を行うことで、その活動の社会的・政治的・文化的意義を理解することができはじめていると考える。 このように、調査対象の社会センターについても、当初予定していた「レオンカヴァッロ」のみならず、他の活動的な社会センターに広げていくことで、より複合的なミラノのオルタナティブな社会活動の状況について研究することが可能となっている。また何より、たびたび訪問することで、かれらとの信頼関係を形成できていることが非常に重要であると考える。 また現在のところまで、1つの論文、そして3回の国際会議での発表というかたちで、成果をまとめ、公表することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、現在手元に収集している社会センターについての膨大な資料(様々な都市社会運動の資料、さらには新聞記事など)を整理・読解・分析することが何より重要な作業となる。この作業を通して、歴史的かつ現代的に、社会センターについて、さらにはその文脈について、実証的に研究することができる。 またイタリアへの現地調査も行うことで、過去のみならず、現在の活動についてもいくつかのインタビュー調査を通して、いっそう把握する必要があると考える。またミラノ以外の場所であっても、社会センター自体についての一般的な枠組みの理解を深めるために、ミラノのみならずイタリア全体の社会センターについてよく知っている人物に聞き取り調査を行う必要も感じている。またグローバル化のなかでのミラノ都市空間の歴史的・地理的変容過程について整理することも必要だろう。 これらの作業を通して、現代都市における空間を拠点としたオルタナティブな社会形成のあり方、都市のシティズンシップや自律的活動に関する興味深い例として、本研究をより体系的に公表できると考える。 引き続き、日本の学会また国際会議での発表に加えて、日本語あるいは英語で、論文・本として、本研究の成果を公表していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、次年度使用額もあるために、イタリア現地調査を9月と2月に2度予定している。それぞれ1週間から2週間の期間を考えているが、これらの旅費・調査費用に研究費を用いる予定である。また、国際会議への参加費・出張費にあてることも考えている。現在のところ、8月に京都で開かれるInternational Geographical Union Kyoto Regional Conferenceでの発表がすでに決まっているが、その他よい機会があれば、エントリー・発表を行う予定である。 また地理学や都市研究の最先端や、イタリア・ミラノについての地理的・歴史的知識を得るために、日本語・英語・イタリア語の書誌を数多く購入する費用が必要となる。 加えて、これまでに収集した資料のデータ管理のために、パソコン類やソフトが必要となろう。
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