2011 Fiscal Year Research-status Report
入所競争率2倍時代の特養の整備拡充に向けた地域的条件と介護保険の持続可能性
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23720411
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
杉浦 真一郎 名城大学, 都市情報学部, 准教授 (50324059)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 特別養護老人ホーム / 施設整備 / 介護基盤 / 介護保険 / 三位一体改革 / 地域格差 |
Research Abstract |
当年度においては,近年の特養の整備をめぐる全体像および制度的変化について整理し分析を行った。整備状況を,65歳以上人口100人あたり整備率として把握したところ,全国で約1.50%であるのに対して,都道府県別では,島根(2.16%),石川(2.08%),福井(2.06%)を筆頭に,東北から北陸・山陰地方など日本海側を中心とした非大都市圏諸県で高い値となっている。逆に,千葉・神奈川・東京・埼玉など首都圏のほか,宮城および愛知で1.20~1.38程度の低い水準にとどまり,さらに大阪(1.38%)や福岡(1.42%)がこれに続き,大都市圏の各都府県で整備率の低さが確認された。 整備の進捗について全国の状況を整理したところ,2001年から2006年までは対前年比の増加率が4.11~5.38%であったが,2007年は3.65%に,2008年は2.98%に落ち込んでいることが明らかとなった。つまり,2004年度まであった従来の施設整備国庫補助金の枠組みが三位一体の改革によって廃止され,都道府県に一般財源化されて以降,全国の特養の入所定員の増加率は低下傾向を示していることが確認された。 比較的小さい定員50人程度の規模でも,新設に少なくとも数億円から十億円程度の資金が必要となる特養の整備において,自己資金で費用の大半を調達可能な設置主体は少なく,都道府県等からの補助金への依存が一般的である。一般財源化以降の整備費補助金について全国の都道府県別の補助基準額を分析したところ,新設(ユニット型)に対して1定員あたり300万から350万円程度を単価とする場合が多いが,東京都・千葉県では400万円以上と高くなっている。逆に,中・四国を中心に西日本の諸県では低く,中でも香川県・大分県では200万円を下回る水準となっている。このように都道府県間で補助のあり方に差異が生じていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当年度は,予算措置が例年と比較して時期的に遅れ,また予算規模の面でも年度半ばまで不透明さが残っていたことがあり,当初計画していた夏季の調査出張の計画立案が具体化しづらかった点が大きく影響したものと考えている。また東日本大震災の影響により,とくに福島県など研究計画時に想定していた東日本諸県における調査訪問を残念ながら自粛・延期せざるを得なかったことも無視できない特別な事情としてあり,全体として詳細な現地調査が遅れる結果となった面がある。このほか,介護保険事業(支援)計画の改定時期と診療報酬改定の時期とが重なる6年に一度の節目が当年度末であった影響から,とくに都道府県を初めとする地方自治体における高齢者福祉担当部署の繁忙性が通常にまして高く,調査協力依頼に対して理解の得にくい年度であった印象も否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
特養の整備に関する行政(都道府県・市区町村)の役割,事業者(法人)の立地戦略,介護保険財政への影響と介護保険制度の持続可能性への影響の3点から,近年の施設整備施策の実態を明らかにするとともに,施設整備の拡充に向けた地域的条件について考察することを目的とした本研究計画を遂行するため,年度ごとの具体的な調査・分析計画を一つずつ着実に実施することを念頭に置いて研究を進める予定である。当年度において次年度に使用することとなった助成金分に関しては,当初予定の計画に対して外的環境の影響によって実現できなかった訪問調査等が残されているが,協力の得られにくい地方自治体(担当部署)に関しては,必要以上にその地域に拘泥することは避け,適切な代替的依頼先を早期に選別し,具体的な調査依頼を行うべく調整することによって対応したいと考えている。こうしたことによって,当年度の残された課題(主に,都道府県等の整備施策における役割分析)に加えて,次年度の中心的課題(主に,事業者の立地戦略)との一体的進展を図っていくことが可能になると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当年度においては,予算措置が例年と比較して時期的に遅れ,また予算規模の面でも年度半ばまで不透明さが残っていたことがあり,当初計画していた夏季の調査出張の計画立案が具体化しづらかった点が大きく影響した。また東日本大震災の影響により,とくに福島県など研究計画時に想定していた東日本諸県における調査訪問を残念ながら自粛・延期せざるを得なかったことも無視できない特別な事情としてあった。このほか,6年に一度の,介護保険事業(支援)計画と診療報酬の同時改定が当年度末であった影響から,とくに都道府県を初めとする地方自治体における高齢者福祉担当部署の繁忙性が通常にまして高く,調査協力依頼に対して理解の得にくい年度であった印象も否めない。こうしたことにより当年度において当初配分について旅費等を中心に次年度に持ち越す結果となった。これら次年度に使用することとなった助成金分に関しては,当初予定の計画に対して外的環境の影響によって実現できなかった訪問調査等が残されているが,協力の得られにくい地方自治体(担当部署)に関しては,適切な代替的依頼先(都道府県等)を抽出し,調査依頼を年度の早い時期に行うべく調整する予定である。
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