2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23720412
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
加藤 政洋 立命館大学, 文学部, 准教授 (30330484)
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Keywords | 米軍統治下 / 沖縄 / 奄美諸島 / 社会地理 / 人口移動 / 郷友会 / 職業 / 居住地 |
Research Abstract |
本年度は奄美諸島の本土復帰から60年目の節目にあたり、各地で様々な取り組みが行なわれたため、現地調査に当たっては、関連する資料の収集と関係者へのヒアリング・インタヴューを実施した。とりわけ重要だったのは、沖縄与論会ならびに沖縄名瀬会関係者へのヒアリングである。それぞれの会の歴史と現状、居住地分布、職業などに関して多くの情報を得ることができた。この一連の調査の過程で、沖縄名瀬会『創立三十周年記念 会誌』(2010年)、沖縄与論会『会員名簿 2002年度版』、沖縄奄美連合会『会誌』(1993年)、沖縄喜界郷友会『創立三十五周年 記念誌』(1999年)、在沖縄沖洲会『在沖縄 沖洲会六十五年のあゆみ』(1989年)などの郷友会誌を収集し、関係者へのヒアリングに当たっては、これら資料の記述に関しても多くの点をご教示いただいた。 期間全体を通じて、本研究では1)米軍統治下で奄美諸島から沖縄へと移動した人口の様態――すなわち、送り出し/受け入れ地域双方の分布――とその規模(経年変化)、2)奄美諸島出身者の職業分布、さらには3)基地都市の形成過程における居住分化に関して、社会地理学的な検討を加え、それらの諸特性を明らかにした。これによって、もはや忘れ去られたといっても過言ではない「在沖奄美出身者」の境位を捉え返し、米軍統治下という軍事化した生活世界のなかで、いかにして彼ら彼女らがその苦境を生き抜いたのかを論じる一端を切り開くことができたと考えている。 さらに、基地都市の形成に焦点を合わせたことで、周辺領野の研究からは抜け落ちた空間の生産をめぐるポリティクスを明らかにすることができ、この過程に孕まれる植民地性の問題をも照射する論点を導き出し得た。このことは、奄美諸島出身者のみならず、沖縄諸島の離島出身者の境位を浮き彫りにする視点であり、今後の研究課題を基礎づけるものとなった。
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