2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720416
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 貴之 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (20455611)
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Keywords | 鍛冶屋 / 北海道 / 変化 / 生存 / 伝統社会 / 民俗文化 |
Research Abstract |
今年度は、オホーツク総合振興局管内の鍛冶屋の歴史的、技術的特性の解明を図り、それに基づく生存戦略を考察、提示することを目指した。 オホーツク総合振興局管内の3市15町1村における調査で確認された鍛冶屋(現在も鍛造を行っているところ)はわずか1軒に過ぎなかった。しかし、かつて鍛冶屋に従事していた方々から明治以降の北海道の鍛冶屋に関する貴重な情報を収集することができ、また、今日に至る経緯や変化などについても聞き取ることができた。特に、斜里町における調査では元鍛冶屋の妻で、自らも鍛冶仕事に携わった90代の女性からお話を伺うことができ、その鍛冶屋は知床をはじめとする道東地域の開発、発展に重要な役割を担っており、まさに鍛冶屋を通して知られざる北海道の開拓の歴史を垣間見ることができるような情報を数多く手に入れることができた。また、紋別市における調査では競馬場を除けば現在ではほとんど存在しない現役の装蹄師からお話を伺うことができ、装蹄業が盛んであった昭和初期から現在に至る変遷、ならび多くの装蹄師が廃業していく中でどうように生き残ってきたかという生存戦略などについて多くのお話を伺うことができたほか、現在の装蹄師の活動や使用される道具等を実際に観察することができ、本調査研究の成果をまとめる上で非常に有意義な情報を得ることができた。 これらの成果については、ホームページにおいて公開・発信するとともに、さらなる情報の収集に役立てる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の調査研究により、道東・道北地域(オホーツク総合振興局)における資料・情報の収集、ならび現地調査 が完了した。 これにより、現時点で完了している地域は、道北、道南、道東地域となり、その調査範囲は着実に拡大しているほか、調査研究の進展に伴う資料・情報等の収集についても徐々にその成果が得られている。しかしながら、今年度は、次年度以降も調査研究を継続するための研究体制・環境の整備が急務であり、最優先事項であったため、調査を予定していた道央地域(上川、空知、胆振、後志)での調査研究を完了することできなかったため、次年度に持ち越さざるを得ない状況にある。また、今年度予定した公開シンポジウムについても実施を延期せざるを得ない状況であったため、これに関しても次年度に持ち越すことになった。 次年度以降も調査研究を継続することが可能な研究体制・環境が整ったことから、改めて調査計画を立て直し、期間中に北海道内の現在の鍛冶屋の実態をおおむね把握し、本研究の目的の達成を目指したい。 現状では、予想以上に鍛冶屋の衰退が進んでおり、比較、分析するのに必要な資料・情報が質的にも、量的にも未だ十分ではなく、各地域の鍛冶屋の歴史的、技術的特性の解明や今後の鍛冶屋の生存戦略の考察、提示といった成果を得られる段階にはいたっていないため、課題も山積みである。また、同時に実施している各市町村の博物館、郷土資料館等で保管されている鍛冶屋関係資料に関する情報の収集についても、予想以上に関係資料が膨大であるため、当初の予定からは遅れており、一部市町村でのみの成果にとどまっている。鍛冶屋関係資料に関する情報の収集に関しては、当初の目的を期間中に達成することは困難な状況にあり、引き続き対応を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は調査が完了していない道央地域(石狩・空知・上川・胆振・後志総合振興局)の各市町村の教育委員会、商工会、博物館、資料館などの協力を得て、現在も鍛冶屋を営む人びと、及びその経験を有する人びとに関する情報を収集する。同時に、各市町村の博物館、郷土資料館等で保管されている鍛冶屋関係資料に関する情報の収集も行う。 得られた情報をもとに現地調査を実施し、各鍛冶屋の現在に至る経緯や現状などに関する情報を収集し、また、各市町村の博物館、資料館等において綿密な資料調査を実施することで鍛冶屋関係資料に関する詳細な情報を丹念に渉猟し、本研究のベースとなる基礎情報を可能な限り収集する。また、得られた情報は、「北海道の鍛冶屋MAP」や「北海道鍛冶屋関連資料データベース」として整理、編集し、随時本研究の専用HP上に掲載し、情報と成果の発信にも努める。 さらに、各地域の鍛冶屋に生じた変化と生き残るための対応を比較、分析することで、道東地域および道北地域の鍛冶屋の歴史的、技術的特性の解明を図る。また、現在も順調に営業を続ける鍛冶屋を選定し、それらが実践している戦略をもとに、今後の鍛冶屋の生存戦略を考察、提示する。 また、上記調査と並行して、鍛冶屋関係資料については、北海道の民俗文化の研究拠点の1つである北海道開拓記念館の膨大な収蔵資料と、北大総合博物館に所蔵されている開拓初期の貴重な未整理資料を中心に、情報の渉猟と整理、データベース化にあたる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた理由は、昨年度実施予定のシンポジウムを次年度に持ち越すことになったためである。 今年度実施予定であったシンポジウムを次年度実施することにより、「次年度使用額」を満額使用する予定である。
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