2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720419
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
武井 基晃 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00566359)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 沖縄 / 祖先祭祀・顕彰 / 公益法人化 / 現代民俗学 |
Research Abstract |
研究テーマ「士族系門中の全体像理解のための現代民俗学」に則して、士族系門中、つまり沖縄の祖先祭祀集団である門中のうち琉球王府の士族の子孫の現状を調査しました。アプローチの方法として1.「先祖以来首里・那覇地区に残っている家」と「琉球王府終焉前後に先祖が首里を離れた家」、2.「首里・那覇の士族の子孫」と「明・清王朝から渡来した文官の子孫」、3.「直系の大宗家および小宗家」と「その他成員(分家筋)」の意識や役割の違いに着目し調査しています。 このうち初年度は1の前者、2の後者、3の前者、すなわち「今も那覇市内に居住する、渡来人系の子孫の宗家と門中」について調査し成果を上げました。まず、基礎資料として各門中の宗家の琉球王府時代の家譜を収集しその内容(世代数、王府内での昇進の記録など)を分析しました。その成果はグラフにして当該門中に提供しています。また、渡来人系の門中が連合して今も運営している那覇市内の明倫堂・孔子廟・天尊廟の現状を調査しました。特に、明倫堂と孔子廟は近年中に那覇市の市営公園の敷地内に移転予定であるため、その経緯および課題についても調査を始めました。さらに、いくつかの門中が法人化(公益法人・一般法人)を進めているので、その過程も調査しています。 並行して、1の後者、2の前者、3の後者、すなわち「先祖が明治頃に首里を離れた門中の下位集団」と、移住先の村落との融和を象徴する伝統行事の例として、綱引きを調査しました。今回撮影した映像は大学での講義の際に教材として早速活用しました。また大正8年に陸地測量部が沖縄の地図を作成するため当時の県下各市町村で記録した「註記調書」(国土地理院所蔵)の分析も進めています。これには琉球王府以来の「村」と、王府時代末期~明治時代に士族が移住した「屋取集落」の戸数・人口が分けて記録され、当時の沖縄県下における士族の移住状況がわかります。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度として、1.渡来系の門中・宗家の調査を開始できたこと、2.明倫堂と孔子廟の移転過程の調査を開始できたこと、3.法人化を進める門中の調査を開始できたことが特筆されます。 また2と3に関連して、孔子と儒教に関連する行事・イベント(例えば毎年9月に孔子廟で行われている孔子祭)や、公益法人を目指す門中が行う祖先祭祀(例えば毎年4月の清明祭=墓参り)は、「宗教なので市営公園や公益法人で行うべきではないものなのか」、「琉球時代から現代まで続いてきた伝統文化として守るべきものなのか」という、今後の現代における門中の全体像を理解する上で核となる大きな問いを得ました。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度から継続して、今年度中に結論が出される公益法人化、来年の完成を予定する市営公園内の明倫堂と孔子廟、そして今年度従来の地で行われる最後の孔子祭と来年度移転先で行われる最初の孔子祭を調査する予定です。これによって、前項で述べた孔子の行事や門中の行事などが「宗教か、伝統文化か」という問いについても1つの答えが出されるかと考えます。 あわせて、学会発表や学術雑誌への研究成果の公開を進めます。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度、物品費が計画より安く上がったことと、調査・資料収集に協力してくれるポストドクター・大学院生が予定より減ったことから、残高が生じました。 次年度は、初年度同様に現地調査のための旅費として使用が多くを占め、研究代表者以外に、調査・資料収集に協力してくれるポストドクターを派遣する予定です。旅費以外には、研究資料や調査に用いる撮影機材の調達を予定しています。また、これまでの研究成果を反映させた解説文と合わせた資料集(大正時代の沖縄県下各町村の「註記調書」集)を印刷・製本し、関係諸機関や研究者に公開する作業が進んでいます。前年度残高と以上の計画をふまえて必要額を請求しました。
|