2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23720419
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
武井 基晃 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00566359)
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Keywords | 沖縄文化 / 公益法人 / 祖先祭祀 |
Research Abstract |
研究テーマ「士族系門中の全体像理解のための現代民俗学」に則して、士族系門中、つまり沖縄の祖先祭祀集団である門中のうち琉球王府の士族の子孫の現状を調査しています。 1.初年度の成果をふまえ、「今も那覇市内に居住する、渡来人系の子孫の宗家と門中」(=明・清王朝から渡来した琉球王府文官の直系の子孫に当たる人々およびその法人組織。通称:久米村人・唐栄人)を対象としています。門中という集団にとっての原典となる王府時代の家譜について学会のシンポジウムで発表(「家譜を読む子孫たち―琉球王府士族の門中―」日本民俗学会第865回談話会「民俗研究は文字文化をどう扱うか」 2012年11月11日、成城大学)し、その論文化も進めています。 2.現在、法人制度(公益法人・一般法人)は改正が進んでいる最中であり、既存の門中法人も琉球王府時代以来の伝統および人的資源、今日まで運用してきた資産を、法改正後も継続的に活かせるように改めて組織の整備が問われています。それへの対応についての調査成果を学会で発表しました(「新「公益法人」制度と門中」日本民俗学会第64回年会 2012年10月7日、東京学芸大学)。 3.渡来人系の子孫が連合して今も運営している那覇市内の明倫堂と孔子廟は2013年度中に那覇市の市営公園の敷地内に移転予定です。その経緯および課題についても調べ、昨年9月に開催された戦後以来の現在地での最後の孔子祭(釋奠)の調査をしました。 4.大正8年に陸地測量部が沖縄の地図を作成するため当時の県下各市町村で記録した「註記調書」(国土地理院所蔵)を分析し、科研費で資料集を印刷しました。当資料は「村」(=琉球王府以来のもの)、「屋取集落」(=王府時代末期~明治時代に士族が移住したもの)について戸数・人口を記録したもので、当時の沖縄県下における人口状況がわかる貴重な資料です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度をふまえ、1.渡来系の門中・宗家の調査の継続、2.法人制度の改正に対応する門中の調査の継続、3.明倫堂と孔子廟の移転過程の調査の継続が順調に進んでいます。 特に2013年中に、「門中の法人(公益法人、一般法人)の認可・認定」と、「明倫堂と孔子廟の那覇市営公園への移転・落成(および移転後初の孔子祭開催)」がいずれも執行されるので、今年度の調査は、当初の予定通り研究計画の折り返しを迎えられます。 これらが偶然にも同年に行われるため、2013年は研究対象である門中の法人・団体にとって大きなターニングポイントとなり、この転換期について前・後を集中的に調査できることは、関係者だけでなく、沖縄の歴史と現在にとっても非常に意義深いものです。引き続き、孔子と儒教に関連する行事・イベント(例えば毎年9月に孔子廟で行われている孔子祭)や、公益法人を目指す門中が行う祖先祭祀(例えば毎年4月の清明祭=墓参り)は、「宗教なので市営公園や公益法人で行うべきではないものなのか」それとも「琉球時代から現代まで続いてきた伝統文化として守るべきものなのか」という、現代における門中の全体像を理解する上で核となる大きな問いについて考察していきます。
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Strategy for Future Research Activity |
継続して、2013年6月に完成・公開を予定する市営公園内の明倫堂と孔子廟について、特に9月に移転先の新しい孔子廟で初めて行われる孔子祭を調査する予定です。さらに11月末日に締め切られる法人(公益法人、一般法人)の認可・認定の状況も調査します。これによって、孔子の行事や門中の行事などが「宗教か、伝統文化か」という問いについても1つの答えが出していきたいと考えます。 また、国土地理院地名情報課、沖縄・奄美諸島関連の研究者と連携して、資料集にまとめた「註記調書」の活用、資料のさらなる収集を進めていく予定です。 あわせて、学会発表や学術雑誌への研究成果の公開を進めます。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中間報告書として刷った資料集の印刷部数が予定よりおさえられたため残高が生じました。 現地調査のための旅費としての使用が多くを占め、研究代表者以外にも、調査・資料収集に協力してくれるポストドクターを派遣する予定です。 旅費以外には、研究資料や調査に用いる機材の調達を予定しています。以上の計画をふまえて必要額を請求しました。
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