2012 Fiscal Year Annual Research Report
オセアニア島嶼地域の聴覚障害者福祉の枠組み構築に向けた文化人類学的研究
Project/Area Number |
23720427
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Research Institution | University of KinDAI Himeji |
Principal Investigator |
倉田 誠 近大姫路大学, 看護学部, 講師 (30585344)
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Keywords | オセアニア / サモア / 障害者 / NGO / 国際援助 |
Research Abstract |
本年度は、サモアおよびオーストラリアで現地調査を行った。サモアでは、「障害者のためのチャレンジ精神の会」で参与観察を行うとともに、障害関連の他のNGOでの聞き取り調査を実施した。また、障害者福祉や海外援助の受け入れなどに関与している保健省、女性コミュニティ社会開発省、教育スポーツ文化省を訪問し、担当者への聞き取りや資料の収集を行った。一方、オーストラリアでは、国立図書館やオーストラリア国立大学付属図書館、聴覚視覚障害児のための王立協会やオーストラリア国際開発庁(AusADID)においてオセアニア島嶼地域の障害者政策に関する資料収集を行った。 その結果、サモア独立国のNGOによる障害者支援の現場では、近年まで「障害」という括りや制度がなかった社会に国際援助などにより「障害者福祉」という枠組みがもたらされ、それを基盤にNGO活動が興隆した結果、NGO活動を行ううえで一部で便宜的・暫定的に「障害者」が生み出されるという構造的な齟齬が生じていることが明らかとなった。さらに、このようなNGOが提供する支援器具やサービスなどの受容を通して「障害」を取り巻く関係性の圏に接し連なることで、「障害」という認識が、「障害」を制度に裏付けられた「個人の属性」と言うよりも、これらNGO等との関係性の継続を通して捉えられるという状況を生み出していた。 以上のような知見から、本研究の目的であったオセアニア島嶼地域における障害者福祉の枠組み構築に向けては、まず障害という範疇を前提とした現在の援助のあり方を再考し、より柔軟で包括的な枠組みのもとで各社会においてNGOが築き上げた様々な関係性の圏とのすり合わせこそが重要であると結論付けた。
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