2012 Fiscal Year Research-status Report
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23720428
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
福井 栄二郎 島根大学, 法文学部, 准教授 (10533284)
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Keywords | 文化人類学 / ヴァヌアツ / ケア / 日本 |
Research Abstract |
平成24年度は、前年より継続して、海外における調査とケア概念の彫琢を行った。海外調査として1~2月にかけてヴァヌアツ共和国・アネイチュム島にて聞き取り調査を遂行した。具体的には高齢者の処遇、介護の現状、死への意識、墓石の移設等に関してのインタビューを行った。 また今回の調査、および前回までの調査で得た資料を分析し、数本の論文を執筆した。 「名の示すもの」では、調査地における命名の重要性を指摘した。これまでの人類学的議論では、名前は「単独性」や「特殊性」のどちらか一方のみを指示するものだと考えられてきたが、私の調査によって明らかになったのは、文脈によってそのどちらも指し示すことができるということである。今後は、名付けという行為を「ケア」という観点から議論したい。 「譲渡できないものを贈与する」では、名前のやり取りに関しての報告である。私の調査地において、名前は親族集団を出て命名されてはいけないという理念と、それが遵守されていないという現実がある。そのずれを贈与論の文脈で論じた。 「人称性を保持するケア」では、高齢者の処遇に焦点を当て、ケア概念を再検討した。ケアにおいて重要なのは、「何」が与えられるかではなく、「誰」が「誰」に与えるのかという「人称性」である。ケアを論じるなかで、この点が感化されてきたことに警鐘を鳴らし、新たなケア論を展開する必要性を主張した。 「「人格」の手前にあるもの」では、ケアを論じる際に最も重要な「人格」概念の再考をおこなった。私の調査では、社会的な人格の手前に、より個別的な「人格のようなもの」が立ち現れる。それをきちんと見極めることが、ケアにおいて重要なのであると論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査と理論的考察の二本柱が順調に機能し、また海外調査もつつがなく遂行できたため、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も調査と理論的考察の二本柱で研究を遂行していく。ただし最終年度ということもあり、やや理論的考察に比重を置くべきなのかもしれない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた学会発表に参加できなかったため、未使用額(154,081円)が生じた。 繰り越し分は、H25年度の研究費と併せて、ヴァヌアツでの海外調査、図書の購入、研究会での発表等に使用する予定である。
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