2011 Fiscal Year Research-status Report
在米メキシコ人移民の"旅的"生活形態と送り出し社会の都市化に関する学際的取組
Project/Area Number |
23720431
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
牧野 冬生 早稲田大学, アジア太平洋研究センター, 特別センター員 (50434387)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 移民 / 一時帰省 / メキシコ / 都市化 / トランスナショナル |
Research Abstract |
平成23年度における重要な課題は、『移民の継続的な移動を中心とした居住形態』『一時帰省(Return Visit)に関わる移民住居建設と都市の変容』『「マイグレーション・シティ」に関する理論化と考察』の3点の検証を中心としたフィールドワークであった。メキシコ社会人類学研究所北東プログラムの協力を得て、メキシコ西部・ハリスコ州ハロストティトラン市においてフィールドワークを9月に実施した。現地では、移民第2世代から第3世代を中心にインタビュー調査を行い、故郷と移住先を頻繁に移動しながら、トランスナショナルな社会的ネットワークを維持継続している生活形態を確認し、特に一時帰省を軸にした視点から住居増加と都市拡大の要因について詳細な参与観察を実施した。今年度の具体的な実績の公表は、平成23年12月の国際開発学会での「移民のトランスナショナルな社会的ネットワーク」に関する学会発表と、平成24年3月の米国応用人類学会での「メキシコ地方都市の都市化」に関する学会発表である。特に、一時帰省の強い動機となる故郷へのノスタルジアを、集団としての移民を捉える基底として地元住民が戦略的に利用するポリティカルエコノミーとして捉えることで、都市化が必ずしも移民の影響によるのではなく、地元住民や残された家族の影響を考慮する必要性を再確認した。また、「マイグレーション・シティ」に関する理論化については、ある特定の家族に着目した3世代にわたるライフヒストリーから捉える方法を検討しており、次年度への課題として残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、『移民の継続的な移動を中心とした居住形態』『一時帰省(Return Visit)に関わる移民住居建設と都市の変容』についてはフィールドワークにより十分な一時資料を収集することが出来た。次年度以降に向けてさらなる研究の深化を図ることが可能である。また、『「マイグレーション・シティ」に関する理論化と考察』については、発展途上国の地方都市における持続的な住民主導の開発手法に結びつけるために、応用的手法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の2年目にあたる平成24年度は、前年度の抽出した問題点を踏まえて、各テーマの一層の深化をはかるため、前年度と同様に現地でのフィールドワークに重きを置く。特に、『「マイグレーション・シティ」に関する理論化と考察』については、(1)米国の住宅(借家)、(2)故郷の農村の住宅、(3)故郷の都市部に建設する海外送金による住宅の3つのタイプの住居を利用するある特定の家族に着目して3世代にわたるライフヒストリーを調査し、移動を前提とした旅的居住観を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に得られた成果について、ラテンアメリカ研究学会で研究発表を行うための旅費、9月に予定しているハロストティトラン市でのフィールドワーク、謝金、資料購入費、が主な予算として計上される。本課題に関して専門的な意見交換と資料を収集するため、国立民族学博物館への国内旅費等を予定している。また、英文研究論文作成における校閲費についても計上している。
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