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2011 Fiscal Year Research-status Report

「生きづらさ」をめぐるネットワークに関する人類学的研究:病気の表現活動の事例から

Research Project

Project/Area Number 23720433
Research InstitutionNiigata University of Health and Welfare

Principal Investigator

杉本 洋  新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (20440472)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywordsネットワーク / 表現活動 / 当事者の実践
Research Abstract

本研究は、精神疾患や引きこもりなどに伴う「病気」の経験を元に作成された自作詩や歌を、各々の経験のトークと共に、イベントの場で観客に向けてパフォーマンスする活動(以下「『病気』の表現活動」と記載する)を対象に、生存者の実践をネットワークの観点から明らかにすることを試みるものである。本年度は、月3回程度の県内外のフィールドワークを行い、情報収集を行った。また、得られた知見は学会での発表を通して公表に努めた。本研究で得られた知見は現状のところ次のようなものである。(1)当事者によるネットワークは、客観的で明確な共通性のみならず、曖昧で主観的な共通性を創造することによって生成される。(2)当事者間の紐帯は、共感するためであると同時に、多様な他者と出会い傷つくためのものでもある。(3)当事者―非当事者の境界は、当事者の有能さや価値ではなく、むしろ双方の負の側面を共有することによって崩される可能性が想定される。(4)当事者内部の差異を強調することにより、当事者集団は外部と接続される。(5)あきらめることは、コントロールできない不幸を受容するのではなく、コントロールの規範をコントロールする当時者の知識である。(6)当事者による自己肯定における自己とは、外部と遮断された自己ではなく、外部の世界を含めた拡張された自己である。(7)多様性を前提とした紐帯の生成や、社会への働きかけは、信念を持たないという強固な信念を基盤としてなされる。以上の内容は、従来共感や共通性でつながるネットワークの観点とは異なる紐帯のあり方や、生存者の技法を示唆するものである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

長期間にわたるフィールドワークが求められる人類学的研究において、定期的なフィールドワークを行い、情報の収集を的確に行えた。また、学会発表を通して収集した知見の公表も行えた。データの分析においても、病気や障害を有する人々が参集する場であるセルフヘルプグループや障害者運動を参照しながら、当事者が構築するネットワークや実践について示唆が得られる見通しが立った。しかしながら、いまだフィールドにおいてみられる生存者のネットワークや実践についての知見は理論的な洗練がなされておらず、課題として残っている。

Strategy for Future Research Activity

フィールドワークは今年度も継続して行う。特に、重要な研究対象のひとつである病気や障害を有する人々によるパフォーマンス集団である「こわれ者の祭典」は、平成24年度に10周年を迎え、過去を振り返りながらも様々な企画が進展している。節目の年のフィールドワークを充実させることによって、活動の歴史的な理解や、集団に通底する精神の表象がなされる可能性が高く、対象の理解を深められると考えられる。また、学会発表により様々な類似の分野で活動する研究者との交流を通して知見を洗練させていく。特に、平成24年度はフィールドワークによりデータの収集に努めるとともに、分析を強化し、学術論文の作成を進める予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

研究費は、主に対象となる活動が行われる場へのフォールドワークに用いられる。特に、県外における活動のフィールドワークが盛んに行われるため、旅費が必要となる。フィールドワークではイベントを録音し、それらをデータにするため、テープ起こしを行うための資金が必要になる。 また、成果を学会等で公表し、知見の収集に努め、他の研究者との意見交換等を行うための旅費、学会への参加費などの諸経費が必要となる。大方のデータ収集、分析用の物品は平成23年度に購入したものの、データを保存するための機器や、フィールドワークでデータを閲覧、活用するための電子機器等の物品、各種消耗品等の購入を行う予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2011

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] 'Illness' in the Performing Arts: Community Organization and the Meaning of Ilizurasa'2011

    • Author(s)
      Sugimoto,H.
    • Journal Title

      6th International Conference of Health Behavioral Science Proceedings

      Volume: Proceeding Pages: 149-151

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 生きづらさをパフォーマンスする人々の境界の活用について2011

    • Author(s)
      杉本洋
    • Journal Title

      保健医療社会学論集

      Volume: 22(特別号) Pages: 57

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 表現する生存者の『恥』の扱い-病気をパフォーマンスする活動にみる実践2011

    • Author(s)
      杉本洋
    • Organizer
      日本文化人類学会
    • Place of Presentation
      東京
    • Year and Date
      2011年6月12日
  • [Presentation] 生きづらさをパフォーマンスする人々の境界の活用について2011

    • Author(s)
      杉本洋
    • Organizer
      日本保健医療社会学会
    • Place of Presentation
      大阪
    • Year and Date
      2011年5月22日
  • [Presentation] パフォーマンスによる生きづらさの表象とネットワークの構築2011

    • Author(s)
      杉本洋
    • Organizer
      アートミーツケア学会
    • Place of Presentation
      京都
    • Year and Date
      2011年11月26日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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