2012 Fiscal Year Research-status Report
ツバルとカーテレット諸島における環境悪化への対応に関する比較民族誌的研究
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23720435
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
立山 博邦 立命館アジア太平洋大学, 教育開発・学修支援センター, 助教 (00550394)
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Keywords | ツバル / バイツプ島 / パプアニューギニア / カーテレット諸島 / 環礁 / 海面上昇 / 気候難民 / 歴史 |
Research Abstract |
本研究は、地球温暖化に伴う海面上昇によって深刻な被害を受けることが懸念されているツバルとカーテレット諸島(パプアニューギニア)において、人々が自分の島で起きている環境の悪化にどのように対応しようとしているのかを比較対照しながら記述・分析することを目的としている。 当該年度は、8月にツバルでの現地調査、2月にパプアニューギニアでの現地調査を計画していたが、所属大学における教育関連の職務が多忙を極め、そちらを優先したことから、前者は実行することができなかった。 パプアニューギニアでの現地調査は2月中旬から3月中旬にかけて実施した。この現地調査では、まず同国首都ポートモレスビーに所在する国立公文書館で植民地時代の「パトロールレポート」を中心に閲覧し、カーテレット諸島に関する記録を洗い出した。その後、カーテレット諸島最大の島、ハン島を訪れ、幅広い年齢層の成人男女約20人に対してin-depth interviewsをおこない、同諸島の文化・社会・歴史および同諸島における環境悪化に対する人々の認識と行動に関する資料を収集した。この現地調査を通して、カーテレット諸島の人々が、自分の島で起きている環境悪化の状況(特に海岸浸食と内陸浸水)をどのように認識し、それに対してどのように行動(特に移住をめぐる交渉)しようとしているのかが理解でき、また、それらの認識・行動が彼らの文化・社会・歴史とどのように関連しているのかを見い出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、以下の3つのことを明らかにすることを目指している。 1)ツバルの人々が、自分の島で起きている環境悪化の状況(特に海岸浸食と内陸浸水)をどのように認識し、それに対してどのように行動(特に移住をめぐる交渉)しようとしているのか、またそれらの認識・行動が彼らの文化・社会・歴史とどのように関連しているのか。 2)カーテレット諸島の人々が、自分の島で起きている環境悪化の状況(特に海岸浸食と内陸浸水)をどのように認識し、それに対してどのように行動(特に移住をめぐる交渉)しようとしているのか、またそれらの認識・行動が彼らの文化・社会・歴史とどのように関連しているのか。 3)環境悪化の状況に対するツバルとカーテレット諸島の人々の認識と行動がどの点で類似し、どの点で相違しているのか、またそれらの類似点・相違点が彼らの自然環境や文化・社会・歴史とどのように関連しているのか。 当該年度終了時点で、2)はほぼ達成できたと言ってよい。しかしながら、他の2つ、とりわけ1)に関する調査はあまり進んでいないと言ってよい。その理由としては、上述の通り、当該年度8月に計画していたツバルでの現地調査が実行できなかったことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年の間にツバルとパプアニューギニアにおいてそれぞれ1回ずつ現地調査を実施した。当初の計画によれば、本研究の目的(上述)を実現するために、3年にわたってこれら2カ国でそれぞれ2回ずつ現地調査を実施することにしていることから、最終年度である次年度は各国1回ずつ現地調査を実施することになっている。しかし、上述の通り、カーテレット諸島に関する調査は完了したと見なしてよい状況にあり、また、ツバルに関する調査については、前年度に1回目の現地調査を実施した際に物事があまり予定通り進まなかった(アーカイブ調査が完了せず、実際の調査地であるバイツプ島を訪問することもできなかった)という状況もある。こうした状況を鑑みて、次年度に実施する現地調査はツバルに絞っておこなうこととしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
8月と2月にツバルで現地調査を実施する。国内外での研究成果発表については予定通り2月から3月にかけておこなう。次年度の研究費はこれらのために使用する。
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