2012 Fiscal Year Research-status Report
学術資料/文化遺産の所有とその活用についてのアラスカ先住民との共同実践研究
Project/Area Number |
23720436
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
久保田 亮 大分大学, 経済学部, 准教授 (80466515)
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Keywords | 国際情報交流 / 文化人類学 / 先住民 / 文化遺産 / 学術資料 / 恊働 |
Research Abstract |
本研究は「調査する側」と「調査される側」の双方が「研究資料・文化遺産」を活用できる体制を構築する事を目的としている。対象となる研究資料は、1970年代に日本人民族音楽学者がアラスカ州内の複数の先住民村落で収集した民族音声資料である。 本年度は、1)「はこだて民俗芸術祭」(2012年8月3日から8月10日)でのフィールワーク、アラスカ州チバック村でのフィールドワークの実施、2)所有および知的財産についての人文社会系研究ならびにアラスカ州をフィールドとする人類学的研究の渉猟、3)アラスカ大学関係者との意見交換ならびに協力関係の確認、4)先住民村落での研究発表、を行った。これらの研究活動に基づく成果は主として以下の3点である。 ①はこだて民俗芸術祭におけるフィールドワークを通して、フォーマル/インフォーマルな場面における、アラスカ先住民による自身の文化伝統である民族ダンスに関する語り、およびパフォーマンスの様子についての民族誌的資料を収集する事が出来た。これらの資料は、本研究が対象とする民族音声資料の現在の文化遺産としての位置づけ、資料価値を考察するための資料となる。ならびにチバック村では、同村住民によるダンス活動に参与観察し、村落生活における民族ダンスの位置づけを探るための資料を収集した②ローズ・スペランザ氏(アラスカ大学フェアバンクス校・アーカイビスト)、レニー・カマリング氏(アラスカ大学フェアバンクス校博物館アラスカ先住民フィルムセンター・映像作家)と、民族資料の保全と活用についての意見交換を行い、合衆国における民族誌的資料の取り扱いのあり方や諸問題についての、具体的な話を聞く事が出来た。ならびに今後の本研究の実施にあたって、両者と協力していくこととなった。③チバック村伝統評議会において、本研究に関する口頭発表を行うとともに、当該資料の保管、管理、活用について意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・民族音声資料に記録されている「歌」が、現代アラスカ先住民村落においてどのような文化的価値を担っているのかを検討するための民族誌的資料を収集する事が出来たため。特に「はこだて民俗芸術祭」においては、アラスカ先住民の、対外的に自身の文化伝統を表象する語りを収集する事が出来たし、また日本という全くの異文化的状況においてダンスを披露する際の仕方についての資料を得る事が出来た。これらの点は、過去の民族音声資料の文化的価値をより適切に理解する上で極めて有益である。 ・昨年度の課題であった研究体制の確立が進展したため。スペランザ氏はアラスカ大学に勤めるベテランのアーカイビストであり、アラスカ先住民の史料に対する姿勢などに精通した人物である。またカマリング氏は「冬の太鼓」をはじめとするアラスカ先住民の生き方に焦点をあてたドキュメンタリー作品の数々を生み出した人物である。さらに本研究が取り扱う資料を収集した人物とも交流があったため、これまで十分にわからなかった資料収集がいかに実施されたのかという点についての情報を得る事が出来た。両者からの協力が得られた事は、本研究の遂行に関して極めて望ましいことである。また両者との意見交換を通して、当該史料の保存環境について、出来るだけ早急に対処する必要がある事が明らかになったため、今後の課題としたい。 ・チバック村伝統評議会において、本研究に関する口頭発表を行うとともに、論文執筆の基礎的資料としてだけでなく、たとえば公共空間における展示といった仕方での、当該資料の活用の是非などについて意見交換が出来たため。今後は、研究代表者、村落住民に加えて、当該資料の所有者(資料収集者の遺族)、博物館関係者などを交えて、さらに検討を押し進めて行く事が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も交付申請書に記載した計画にそって実施する。 2013年度は現在恊働中の先住民村落以外の諸村落に作業領域を拡大し、研究資料の保全と利用について意見交換を行うとともに、歌の所有と言う問題について検討する。2014年度は研究成果を国内外で発表するとともに、当該研究資料の取り扱いに関するガイドラインを提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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