2012 Fiscal Year Research-status Report
伝承技術の歴史・民俗学的研究―採石技術の究明と記録保存―
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23720437
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
松田 睦彦 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (40554415)
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Keywords | 石材採掘 / 花崗岩 / 安山岩 / 伝承技術 / 民俗研究映像 |
Research Abstract |
11月27~29日 福井県福井市の一乗谷朝倉氏遺跡において笏谷石製遺物の調査を行ない、鍋や炬燵といった生活用具をとおして、中世における石材加工および利用の実態を確認した。 12月22日 埼玉県小川町において中世の緑泥石変岩の採掘遺跡を見学した。 12月27~29日 福島県南会津郡只見町において石材加工に携わった職人が所持していた巻物の所在確認調査を行った。当該地域の大工や屋根葺きなどの職人には、一人前になると儀礼に用いるための巻物を所持する慣習が伝えられてきた。職人の数は限られているが、石屋にもその傾向が認められる。本調査では、既報告の巻物について、その伝承の経緯を確認する予定であった。しかし、所有者の死去にともない、巻物の所在が不明となっていることが明らかとなった。 2月1~2日 静岡県熱海市において安山岩採掘用具の調査を行なった。静岡県熱海市では戦後も自家用の石垣用石材の採取などが行なわれており、ノミやヤ、セットウ、ゲンノウ、その他鍛冶用具などが良好な状態で保存されている。そこで、採石用具の実測調査およびその使用に関する聞き取り調査を行なった。その結果、採石用具やその使用法については花崗岩と類似することが明らかとなったが、岩石の性質を踏まえたさらに詳細な調査が必要であるという結論に至った。 2月22~24日 愛媛県今治市宮窪町で花崗岩採掘を行なっている現役の採石業者および考古学研究者とともに、中世の花崗岩採掘遺跡および花崗岩による石造物の調査を行なった。その結果、中世の石仏などに残された矢穴が、花崗岩の性質をふまえた巧みな計算のうえであけられたものであることが明らかとなった。これは、平成23年度に調査を行なった香川県小豆島の大坂城石垣石切丁場跡で見られる、非熟練労働者を大量に動員した際に掘られた矢穴とは別の傾向を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は花崗岩採掘技術の究明と記録保存を目的としている。 平成24年度は上記のとおり、中世の石造物に残された石材加工の痕跡について現役の採石業者とともに検討するという、従来行われてこなかった新しい調査法を取り入れて成果をあげえたほか、安山岩の採掘・加工技術についても調査を行ない、花崗岩採掘技術との比較を行なう基礎を固めることができた。 さらに、花崗岩採掘技術の記録保存についても、所属機関における映像制作事業との連携をはかりながら、10日間にわたって現代の花崗岩採掘現場に密着して撮影を行ない、民俗研究映像「石を切る―花崗岩採掘技術の伝統と革新―」としてまとめた。本映像では、平成23・24年度の調査をふまえ、中世および近世における石材採掘技術と現在の石材採掘技術の連続性を指摘し、さらに、現代の石材採掘の全工程を記録した。また、戦前から戦後にかけて石材採掘業に従事してきた人びとの語りをとおして、石材採掘技術の戦後の変化を明らかにしたと同時に、石材採掘に従事してきた人びとの生活や、石材採掘にともなう信仰などについても記録している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は所属機関において企画展示「時代を作った技―中世の生産革命―」の開催を予定している(7月2日~9月1日。その後広島県立歴史博物館に巡回)。この展示に向けて展示用映像の整理を行なうとともに、展示で取り上げる安山岩の採掘・加工技術についてもさらなる調査を進め、今後、花崗岩採掘技術との比較を進めるうえでの基礎を固めたい。 また、花崗岩採掘の経験者から、機械化される前の技術についての聞き取り調査を進め、データの蓄積につとめたい。現在、機械化以前の花崗岩採掘を知る人の高齢化が進んでおり、早急な対応が求められる。 さらに、引き続き花崗岩以外の岩石の採掘技術についても、採掘現場や遺跡の見学、そして石材採掘経験者からの聞き取り調査をとおして検討し、花崗岩採掘との比較の材料としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においても昨年度同様、石材産地での調査を行なうための旅費が中心となる。花崗岩採掘経験者への聞き取り調査を瀬戸内海地域で行なうほか、安山岩採掘に関する調査を伊豆半島地域で、さらに石材加工品に関する調査を四国地方で行なうことを予定している。 また、凝灰岩や砂岩といったその他の岩石についても積極的に調査を行ない、花崗岩採掘技術の相対化につとめたい。
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Research Products
(1 results)