2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730001
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
郭 舜 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30431802)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 法哲学 / 国際法 / グローバルな法秩序 / 行政 / 公共性 / 国際法と国内法 |
Research Abstract |
グローバルな行政概念の再検討という本研究課題における本年度の目標は、研究環境の整備および基礎的研究の遂行であり、計画はおおむね順調に進んだ。 研究基盤整備としては、法哲学・国際法学・行政法学・国際関係論・政治学などの基礎的資料の収集を主に行い、機材等については漸次整備することとした。また、国内外の研究者と意見交換を行い、最先端の研究動向についての知見、および今後の協力の基盤を得た。 基礎的研究を進めるに当たっては、国内外における研究発表を通じた深化を摸索し、(1)国際司法裁判所判例研究(『北大法学論集』62巻1号)、(2)法哲学・社会哲学国際学会連合(IVR)世界大会(フランクフルト・8月)におけるワークショップでの報告、(3)北大法理論研究会・国際法研究会における報告、(4)アジア国際法学会若手研究者ワークショップ(シンガポール・2月)における報告などを行い、それぞれ活発な意見交換がなされ、研究ネットワークの形成と研究の進展に大変有益であった。 研究の内容面においては、行政を中心とする国内法実践に国際法がいかなる影響を与えているか、それが国内法にとってどのような意味を持つのかについて考察を深めた。上記の研究報告はいずれもこの点に関わり、一定の事実状態の実現を志向する国際法による国内法システムのコントロールという、グローバルな行政現象の構造的側面に光を当てたものとなっている。 次年度以降の準備として、2012年の秋に行われる日本法哲学会学術総会ワークショップへの応募を行い、開催が決定している。本ワークショップにおいてはグローバルな行政の存立基盤に関わる国際法概念論の探究を主題とする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究環境を整備し、またグローバルな行政現象の理論的把握、および行政概念に関する一般理論モデルの構築の作業を行った。経過はおおむね順調であり、部分的には期待を上回る進展が見られる。具体的には以下の通りである。 グローバルな行政に関わるさまざまな法現象について、国際法制度と国内法制度との相互作用を明らかにし、地球規模における法の融合状況の事実の把握、問題の析出、理論化に関する基礎的な研究を終えることができた。そして、これらの研究についてはその成果の一部をまとめて海外のワークショップで発表しており、部分的には期待以上の進展を見せている。 これと並行して、「行政」概念に関する法哲学的考察を深め、公共財供給の問題と関わる公共性概念を基礎としたモデル化を進めた。このモデル化に当たっては、集権的な公共事務提供主体の存在を必要条件としない、分散的・非権力的な公共事務提供のあり方を射程に収めており、その点でグローバルな問題状況に直ちに適用可能なものである。本研究計画の当該部分については、次年度以降の公表を予定している。 この他、資料収集、および関連する研究者との意見交換も随時行っており、最新の研究動向の把握に貢献している。この点でも計画は順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究が順調に進み、最新の研究動向を把握した上で、グローバルな行政現象の分析と行政概念の一般理論モデル構築を行うことができたので、次年度以降はこれをさらに発展させるとともに、これまでの研究成果の公表を通じて一段の深化を図る。 以上の目的のため、次年度は国内外の研究者を積極的に訪ね、意見交換を活発に行い、より広い視野からの現象把握およびモデルの精緻化を図る。また、引き続き文献・資料の収集を行い、最新の研究動向の把握に努める。 2012年11月に関西学院大学にて行われる日本法哲学会でワークショップを開催することが決定しており、基礎理論に造詣の深い国際法学者を交えて、地球規模の法状況について、法哲学と国際法学の二つの異なる学問領域の相互作用によって新たな光の当て方を見出すことを企図している。 ワークショップの開催に当たっては、事前の準備段階で綿密な打ち合わせを行うつもりである。それにより、当日の議論を噛み合った実りの多いものとするだけでなく、本研究の幅を広げるような多くの示唆を得ることを目指す。 以上の計画が順調に進み、研究が目的を達成できた段階で、さらに成果の取りまとめ、出版へと進む。単著としての出版、国内外の学術雑誌への投稿、大学紀要への投稿など、複数の選択肢を視野に入れている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、一度の出張で複数の研究者と意見交換を行うなどの節約に努め、また購入の対象となる文献の出版が想定よりも少なかった(刊行が遅れた)ことなどから、やや研究費に余裕があったため、これを次年度以降の文献購入に充てることが有益と判断した。 次年度重視するのは日本法哲学会のワークショップの開催であり、これに向けた準備のため、関係する研究者との打ち合わせを定期的に行う。関係する研究者はほとんどが遠隔地であるため、旅費の支出を予定している。また、これとは別に国内外の研究者との意見交換を行うことを予定しているため、そのために必要な旅費を支出する。 引き続き最新の研究動向を把握するため、資料収集を行う必要があり、本年度の繰り越し分と合わせて購入に充てる。 この他、資料整理に当てるため、ドキュメントスキャナーなどの購入を予定している。
|
Research Products
(3 results)