2013 Fiscal Year Annual Research Report
米国<不法行為改革>の展開と背景――現代アメリカ私法史に向けて
Project/Area Number |
23730003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
会澤 恒 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (70322782)
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Keywords | アメリカ法 / 不法行為改革 / 法形成過程 / 民事司法を閉じる / 法学方法論 |
Research Abstract |
1 米国〈不法行為改革〉をめぐっては一時の激しい対立状況からは落ち着きを見せている。〈改革〉推進派が所期の目的をほぼ達成したと評価でき、その要因として産業界が公益の担い手であるとの認知の獲得に成功したことを指摘できる。だがその結果として、不法行為法上の請求の連邦行政規制による専占の局面に顕著であるが、被害者が補償なき状態に残されることを容認する法理が定着した形になった。原告に対する救済(の可能性)の確保、私人のイニシアティブによる違法行為の摘発という不法行為法の機能は後景に退くこととなった。 2 他分野との比較という観点から、連邦仲裁法や民事手続をめぐる近時の判例動向も注目された。そこでは、裁判所の管轄権を限定し、より早い段階で民事手続を打ち切り、あるいは事件を裁判所ではなく仲裁に付託する範囲を拡大する傾向が顕著である。裁判所が民事司法から撤退し、いわば民事司法を閉じる構えを見せている。そこに見られる発想は、社会とりわけ産業界への負担としての民事司法という理解であり、このことは、不法行為分野に見られる動きが孤立したものではないことを示す。 3 他方、以上の検討は法解釈方法論に関する次なる課題を浮かび上がらせた。前記の動向は、実際の法言説としては形式主義的方法による法解釈という形態をとる。例えば仲裁の拡大は当事者の合意にそのまま効力を与えるべしとの立法の文言解釈を基礎とするが、そこに見られるのは「当事者」の内実を問うて契約の拘束力を調整してきた20世紀契約法学の成果の忘却である。より一般化すれば、リーガル・リアリズム以降の社会的インパクトを念頭に置いた法学方法から、そうした点に無頓着なそれ以前の古典的法思想への回帰とも言える。この点の正当化としてはデモクラシーの下での裁判所の立法部への敬譲が強調されるが、それが規範論として成功しているかはさらに検討されるべき問いとして残った。
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Research Products
(4 results)