2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
見平 典 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (90378513)
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Keywords | 違憲審査制 / 司法積極主義 / 最高裁判所 / 司法政治 / 基礎法学 / 公法学 |
Research Abstract |
本研究は、違憲審査制が憲法保障・人権保障にとって鍵となる制度であることから、違憲審査制の運用を評価し改善するための視座を獲得するため、違憲審査制の運用に関する経験理論を構築することを目的としている。そのために、本年度は主に以下の作業に取り組んだ。 まず、違憲審査制の運用に関して確かな経験理論を構築するためには、まずもって具体的な事例の分析が欠かせないことから、前年度に引き続き、2000年代のアメリカ連邦最高裁判所による違憲審査権行使の中でもっとも論争的かつ「積極的」と位置づけられている、ブッシュ対ゴア事件判決を取り上げ、この背後で働いていた要因について分析を行った。その結果、本件判決行動の背後には法的考慮のみならず非法的考慮が働いていたとみられること、後者の方が前者よりも優勢であった可能性があることを見出した。そして、そうした違憲審査権行使のあり方を生み出した政治的・制度的文脈を考察し、その成果の一部を論文にまとめた(見平典「大統領選挙紛争と投票権の平等」大沢秀介・大林啓吾編『アメリカ憲法判例の物語』(成文堂、2014年)所収)。 また、本研究はこれまで違憲審査制の運用の規定要因として、裁判所の保有する資源量に着目してきたが、本年度は特に司法の民主的正統性や開放性が、そうした裁判所の資源量に及ぼす影響や、それらが憲法秩序の形成過程において有する意味について注目し、考察に取り組んだ。 さらに、これまでの研究成果を研究会などにおいて発表し、様々な専門分野の研究者から批判と助言を仰ぐとともに、日本およびアメリカの違憲審査制の動態や司法行動に関する情報の収集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本およびアメリカの裁判所による違憲審査制の現実の運用について経験的・動態的な分析を行うとともに、そうした事例分析の蓄積を通して、違憲審査制の機能条件を析出し、この制度の運用に関する経験理論を形成することを目的としている。 このような目的の下、現在までに、20世紀中後期のアメリカ連邦最高裁判所による違憲審査制の運用の展開について著書を刊行するとともに、近年の同裁判所による重要な違憲判決の背景について論文を公表することができた。さらに、日本の最高裁判所による違憲審査制の運用の展開について、特に近年の変化に焦点を当てつつ考察を進めており、その成果の一部を公表している。また、それら事例分析の成果を踏まえつつ、違憲審査制の運用に関する理論枠組みの洗練と検証、および深化にも取り組んでおり、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、日本およびアメリカの裁判所による違憲審査制の運用について、動態的な事例分析の蓄積をさらに進める。特に次年度は、日本の最高裁判所による違憲審査制の運用の展開について、主に1990年代後期以降にみられる変化に着目しつつ、一次資料や幅広い関連文献を踏まえながら学際的な分析を行いたい。また、アメリカ連邦最高裁判所の判例分析の研究会に参加し、同裁判所の違憲審査制の運用について引き続き情報収集を行う。 第2に、違憲審査制の運用に関する経験理論・理論枠組みの深化・充実に取り組む。特に、司法の民主的正統性や開放性が違憲審査制の運用に及ぼす影響について、日米の司法制度の比較分析や上記事例分析の成果に基づきつつ、本年度に引き続き考察を進めていきたい。さらに、それらの検討の結果を踏まえて、日本に相応しい違憲審査制の運用や憲法秩序の形成を実現していくために必要な制度的手当について、考究したい。
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