2011 Fiscal Year Research-status Report
在留制度と家族関係の維持―考慮されるべき利益と正当化根拠の探究
Project/Area Number |
23730014
|
Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
坂東 雄介 札幌学院大学, 法学部, 講師 (50580007)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 在留特別許可 / アメリカ / 移民 / オーストラリア / 裁量 / 家族共同生活 |
Research Abstract |
(1)平成23年度は、日本において、外国人の在留を判断する際に、家族関係の維持という利益について、立法、実務、裁判例それぞれがどのように考慮しているのかを明らかにした。 現在の勤務先である札幌学院大学にて開催される法政研究会にて、「外国人に対する在留特別許可と家族生活を維持・形成する利益―近年の三判決を素材として」という研究報告を、2011年6月16日に行った。その時に受けたアドバイス、コメント及びその後の研究活動において得た知見を元に修正した論文を、平成24年度秋ごろに「札幌学院大学法学」(学内紀要)にて公表する予定である。 この研究成果の具体的内容は、家族関係を維持する利益が争点となった在留特別許可をめぐる裁判例が近年相次いでいることを受け、その分析・検討である。この研究では、国会における審議や法務省が公表している「在留特別許可に関するガイドライン」が、裁判の中でどのように位置づけられているのかを明らかにした。この研究成果は、従来は広範なものと捉えられていた、在留特別許可に関する法務大臣の裁量を統制する手がかりを明らかにするという意義を持ち、在留特別許可をめぐる裁判及び実務に対して理論的な基礎を与えるという重要性を有する。(2)作業(1)と並行して、アメリカ移民法を理解する上で、基礎となる文献・判決を中心に、資料の収集及び読解も行った。このような予備的作業により、平成24年度の研究計画もスムーズに遂行できることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属変更(北海道大学から札幌学院大学)により、研究環境が変わり、当初の予定よりも若干の遅れがある。具体的な理由は、(a)所属研究機関における資料の不足、及び(b)教育負担の増加による研究に割り当ることができる時間の不足である。理由(a)については、学外から資料の取り寄せ、北海道大学にアクセスすることによって概ね解決しているが、当初の予定より即時に資料を収集できない状況にある。理由(b)については、今後も継続して恒常的に生じるものであるため、(b)の状況を踏まえた上で、研究計画の若干の変更により対処したい。 具体的な遅延内容としては、当初は、在留特別許可に関する裁判例の分析及び研究成果発表を平成23年度内に行う予定であったが、上記の理由により資料収集・資料の読解に時間がかかったため、平成24年度に論文を公表することとなった。ただ、研究課題に関する論文や判例評釈がここ数ヶ月公表されていることを踏まえると、それらの研究成果を取り込んだ、クオリティの高い研究成果を発表できる機会を得た、と積極的に解している。 今後の研究計画の変更についても若干触れておくと、現在の所属先では、特に外国法の文献について資料が圧倒的に不足している。したがって、アメリカ合衆国の移民法の状況について取り組む予定である平成24年度の研究については遅れが生じることは、容易に予想される。そのため、当初研究計画に予定していたことをいくつか削る必要があると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、アメリカ合衆国の立法・実務・裁判例において、外国人の在留を判断する際に、家族関係の利益が、どのような背景のもとで考慮されるようになり、また、どのように位置付けられてきたのかを明らかにするための調査を行い、内容をまとめた研究報告を行う。 平成24年度の研究計画を推進するためには、当該領域に関するローレビュー、判例評釈、議事録の読解が主な作業を占める。 上記作業と並行して、平成23年度の研究計画に当たって生じた遅延を取り戻すための作業を行う。【現在までの達成度】に記述した内容の通り、平成23年度にて行った研究会報告をベースとして、新たに獲得した知見(特に、平成23年度に行った報告以後に発表された判例評釈や論文)を取り込みつつ修正を加え、平成24年度の秋ごろに札幌学院法学(学内紀要)に研究論文として公表する予定である。 ところで、研究代表者は、平成23年度にも、アメリカ移民法に関する資料の収集・読解を行ったが、そのときに、家族関係を維持する利益についてアメリカ移民法とオーストラリア移民法を比較する研究成果に接した。ここから、オーストラリア移民法への視点を広げることで、日本法を相対化するためのさらなる評価軸を獲得することが期待できる。ただし、オーストラリア移民法研究にまで手を広げると、現在の状況では中途半端なものになってしまうと予想されるため、端緒的な研究に止め、現在の研究課題をある程度達成次第取り組む予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究計画を遂行するためには、特にアメリカ法に関する資料収集が必須である。アメリカ法の資料収集は、アメリカ合衆国政府又は連邦議会、アメリカの有力大学(イエール大学によるAvalon Projectやコーネル大学によるLegal Information Instituteなど)がウェブサイト上で公開している無料データベースを用いる。しかし、これだけでは十分とは言えず、必要な資料を手に入らないことが多い。特に、研究代表者が現在勤務している札幌学院大学では、アメリカ法に関する資料が圧倒的に不足している。そのため、関連領域における書籍の購入が研究費の使用において大きな割合を占めると思われる。また、他の研究機関への文献複写依頼が必要なため、そのための費用としても使用する。 また、上記の資料収集だけでは十分と言えないため、国内外の研究機関にアクセスし、資料収集を行うことも必要である。訪問先としては、国立国会図書館のほか、アメリカ太平洋地域研究センター(東京大学)、立教大学アメリカ研究所、同志社アメリカ研究所などを予定している。このように訪問先は、関東、関西と多岐にわたっているため、そのための旅費・滞在費及びコピー代としても、研究費を使用する予定である。訪問予定の国外の研究機関としては、ジョージタウン大学を予定しているが、【現在までの達成度】にて記述した事情から、平成25年度に先延ばしすることも考えている。 最前線の研究状況を獲得するためには、学会(特に、日本公法学会、国際人権法学会)への参加も必要である。また、研究代表者の研究課題について卓越した知見を持つ棟居快行教授、村上正直教授(両名とも大阪大学)からコメントをもらう予定である。このような研究活動を行う旅費としても研究費を使用する。
|
Research Products
(1 results)