2011 Fiscal Year Research-status Report
憲法学におけるデモクラシー観念の変容とその理論的背景
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23730017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 知更 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (30292816)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 憲法 / ドイツ / デモクラシー / 憲法理論 / 統治機構 |
Research Abstract |
本年度は、以下の3点を中心に研究を実施した。第一に、ドイツにおいて実定憲法上の法的要請としての民主政原理が、80年代以降いかに発展を遂げてきたか、その特質を分析する作業を進めた。とりわけ、民主政原理を厳格に解する立場の代表者であるMatthias Jestaedtの博士論文『Demokratieprinzip und Kondominialverwaltung』(1993年)の議論の構造について内在的分析を試みるとともに、これと反対により柔軟な立場に立つ議論についても検討を進めた。特に、近時の著作であるSebastian Unger『Das Verfassungsprinzip der Demokratie』(2008年)における規範構造論として深化された分析から、ドイツにおける現在の議論水準とその特質の一側面について理解を深めることができた。第二に、民主政原理をめぐる諸問題が、EU・連邦制・地方自治といった多層的システムの中で具体的にどのような形で現れるかについて、研究を進めた。EUと連邦制についてはこうした関心からそれぞれ研究論文を執筆し、公表した。また地方自治については、大学内の研究会で研究報告を行った。第三に、ドイツにおけるこうした諸問題の現れ方は、背後に存在するより大きな方法論的問題とも無縁ではないと考えられるが、この方法論的ないし基礎的問題に関して、とりわけ憲法理論と憲法解釈の関係について80年代以降の時期にドイツでどのように議論されてきたか、検討を進めた。中でも、Matthias Jestaedtの憲法理論に関する一連の仕事から、今後の研究を進める上での分析視角について大きな示唆を受けた。なお、他の研究プロジェクトとの関係で3月に3週間ほどドイツで資料・情報収集を実施したが、この際に本研究の主題についても現地の研究者から有益な示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツにおける民主政原理に関する学説状況を、まず80年代以降現在に至るまでの新しい時期について検討するという作業を、これまで当初の予定通り順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ当初の研究計画通り順調に研究を進めることができており、今後もこの作業を継続する予定である。ただし、まずは80年代以降現在までの時期を検討対象としつつ、徐々にその前史へと遡及していくのが当初の研究計画であったが、近時の議論状況についてもう少し立ち入って検討を深める必要性も感じており、当面は研究の進捗状況を見ながら、研究の重点をどこに置くかを多少柔軟に調整したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、文献資料の収集に力を入れるとともに、日程などの諸事情が許す場合には、ドイツに出張して現地の研究者との意見交換の機会もなるべく持ちたいと考えている(なお、発注した洋書の入荷時期との関係もあり研究費が若干繰り越しになったが、これは次年度も同様に資料収集に充てる予定である)。
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Research Products
(3 results)