2012 Fiscal Year Research-status Report
イギリス地方分権改革に伴う地方行政法理の変容とその行政法学への影響に関する研究
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23730018
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長内 祐樹 金沢大学, 法学系, 准教授 (00579617)
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Keywords | イギリス地方自治法 / イギリス行政法 / 外部監査 / 行政裁量 |
Research Abstract |
本年度も、昨年度に引き続き、早稲田行政法研究会、イギリス行政法研究会、北陸公法判例研究会等での報告を通じ、日本並びにイギリスにおける自治体財政に対する監査制度にかかわる知見を広げることができた。 また、イギリスの地方行政全般の現状、及び自治体会計監査制度にかかわる文献収集を行い、主として、イギリスにおける今日の(1970年代以降の)自治体の財務会計行為に対する外部監査制度の仕組み及びその効果についての検討を行った。 その結果、第一に、日本における自治体監査制度が、いわば自治体内部での自治監査を原則としており、また、不正または非違の摘発は副次的な目的であるという基本的思考に立脚するものと評価できるのに対し、イギリスにおけるオーディターによる自治体外部監査制度は、自治体外から派遣されるオーディターが、不正の摘発をもその主要な責務として監査を行う点において、効率的かつ適正な自治体運営を担保することに対する寄与度は高いと評価できることが確認できた。 また第二に、自治体の財務会計行為の適法性判断基準について、日本、イギリスともに自治体の裁量権の存在を前提として、裁量権の逸脱濫用が認められる場合に、これを違法とする点では共通していること、しかし、裁量権の逸脱濫用の有無の認定について、日本の場合、いわゆる「最小限の審査」が採られる場合が少なくないのに対して、イギリスでは、財務会計に関する裁量統制が比較的厳格に行われていることが確認できた。 そして、こうした成果の一部を、長内祐樹「イギリスにおける自治体外部監査の制度的特徴」『「地域主権改革」と地方自治(地方自治叢書24)』(敬文堂、2012年)及び、長内祐樹「住民訴訟の係属中にその市の損害賠償請求権を放棄する市議会の議決を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例」早稲田法学88巻1号(2013年)として公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初、イギリスにおける海外調査を予定していたものの、私事ではあるが子供の誕生という事情からこれを断念せざるをえなかった。しかし、国内の研究会や学会、あるいは文献等による知識収集を積極的に行った。 そしてその結果として、1970年代以降のイギリスにおける自治体財務会計への統制制度について、包括的な理解が得られ、またその成果を大学紀要において公表することができたことから、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も、まず学会や研究会への参加や文献収集を通じて、本研究テーマに関連する情報を積極的に得る。 そしてイギリスにおける自治体の財務会計行為における裁量権とその統制のあり方について、地方分権改革に伴う立法的措置を踏まえながら検討を進め、その成果を論文としてまとめ2013年度後半ないし2014年度前半までには公表する予定である。また、それと同時に、とりわけ財務会計行為に関する自治体の裁量統制の観点から、イギリスにおける2000年以降の地方分権改革の方向性とその意義についての検討を進める。
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Research Products
(2 results)