2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23730020
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (40359972)
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Keywords | 表現の自由 / 言論の自由 / ヘイトスピーチ / hate speech / 憎悪表現 / 憲法 / アメリカ憲法 / 差別的表現 |
Research Abstract |
当該年度は、当初の計画どおり、アメリカにおける憎悪表現(hate speech)規制に関する判例法の中核に位置する1992年の連邦最高裁RAV判決(R.A.V. v. City of St. Paul, 505 U.S. 377 (1992))の法廷意見に焦点を当て、法廷意見が形成された過程の検証を行うことで、RAV判決の先例としての位置づけと射程の再考を行った。RAV判決は、憎悪表現規制を違憲と判断した重要判決として評価されているが、法廷意見の形成過程の検証を行った結果、当初の法廷意見は憎悪表現規制を合憲と判断する余地を認めたホワイト判事が執筆していたことが分かった。そして、ホワイト判事が法廷意見の校正を重ねる中で、全面違憲論を展開したスカリア判事を支持する判事が増えた結果、法廷意見の執筆担当者がホワイト判事からスカリア判事へと交代するに至り、スカリア判事執筆による全面違憲判決が完成したという新事実が判明した。この検証を通して、RAV判決は先例として確立してはいるものの、違憲判決として発表されたこと自体は様々な条件が重なった偶然の結果であるという側面も有していることが分かった。 当該研究成果は、「連邦最高裁における法廷意見の形成過程 ―憎悪表現規制に関するR.A.V. v. City of St. Paul判決―」(小谷順子・新井誠・山本龍彦・葛西まゆこ・大林啓吾編著『現代アメリカの司法と憲法――理論的対話の試み』尚学社、平成25年1月刊行)において発表した。 さらに、当該年度は、カナダにおける憎悪表現規制についての研究も行った。同国の連邦法では、刑法と人権法の双方で憎悪表現を規制しており、両者とも連邦最高裁で合憲と判断されているが、その後の状況の変化に伴い、人権法の規制は廃止される見込みである。当該研究の成果は、平成24年11月に開催された国際人権法学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、当初の計画どおり、アメリカにおける憎悪表現(hate speech)規制に関する判例法の中核に位置する1992年のアメリカ連邦最高裁のRAV判決(R.A.V. v. City of St. Paul, 505 U.S. 377 (1992))の法廷意見に焦点を当て、法廷意見が形成された過程の検証を通して、RAV判決の先例としての位置づけと射程の再考を行った上で、その研究成果を「連邦最高裁における法廷意見の形成過程 ―憎悪表現規制に関するR.A.V. v. City of St. Paul判決―」(小谷順子・新井誠・山本龍彦・葛西まゆこ・大林啓吾編著『現代アメリカの司法と憲法――理論的対話の試み』尚学社、平成25年1月刊行)において発表した。 さらに、当該年度には、カナダにおける憎悪表現についての研究も行い、その成果を平成24年11月に開催された国際人権法学会において発表した。 これらのことから、当該計画は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、当初の計画どおり、これまでの研究成果をふまえ、日本における表現の自由の判例法理論を改めて分析・検証した上で、米国の判例法・学説との比較考察を行ない、米国の憎悪規制をめぐる憲法論争のいかなる部分を日本法に応用しうるのかを見極める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)